定格短時間耐電流とは、PAS(高圧気中開閉器)が短絡事故時に
自身が損傷することなく耐えられる最大の電流値を、規定の時間内で示したもの。
この能力は、熱的および電磁的な影響の両面で評価される。
定格短時間耐電流の重要性

PASは、構内の高圧機器を短絡事故から保護するために設置される
SOG(地絡方向継電器付き開閉器)の役割を担っている。
事故が発生すると、SOGがこれを検知し、電力会社側の遮断器が動作するまでの短い間
PASは事故電流に耐え続けなければならない。
PASの主な性能
- 熱的耐力
短絡電流のような大電流が流れると、抵抗によってジュール熱が発生し
開閉器の内部温度が急激に上昇する。
この熱に耐え、溶損などを起こさない性能が求められる。 - 電磁的耐力
大電流が流れると、電流同士が反発する電磁力が発生する。
この力が非常に強いため、開閉器の接点や端子を吹き飛ばしたり
変形させたりする可能性がある。
この強力な力に耐え、機器の構造を維持する性能が求められる。
この性能が不十分だと、電力会社側の遮断器が動作する前にPASが破損してしまい
大規模な停電(波及事故)につながるリスクがある。
PASの銘板の表記と意味

PASの銘板には、通常以下のように記載されている。
- 定格短時間耐電流: 8kA
- 定格短時間耐電流時間: 1秒
これは、「このPASは、8kAの事故電流が1秒間流れても、熱的・電磁的な損傷を負うことなく耐えられる」
ということを示している。
この「1秒」という時間は、電力会社側の配電用変電所にある遮断器が
短絡事故を検知して遮断するまでの標準的な時間(通常1秒以内)に基づいている。
PASは、この1秒間を耐え抜くことが、事故時のシステム全体の安全性を確保する上で非常に重要となる。
定格短時間耐電流と定格遮断電流の違い

PASの銘板には、定格短時間耐電流以外にも
定格遮断電流という項目が記載されている場合がある。
これらは似ているようで、全く異なる性質の電流となる。
定格短時間耐電流(Rating short-time withstand current)
PASが開路した状態で短絡事故が発生した際、電力会社の変電所にある遮断器が動作するまでの短い間
耐え抜くことができる電流の最大値のこと。
=電流を遮断する役割ではなく、あくまでも事故電流に「耐える」能力を示す。
定格遮断電流(Rated breaking current)
PASに備わっている高圧ヒューズが、事故電流を遮断できる最大の電流値のこと。
この電流値を超えると、ヒューズが溶断し、事故電流を遮断できなくなる。
まとめ
●耐える能力を示すのが定格短時間耐電流。
●遮断する能力を示すのが定格遮断電流。

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