インバータは、直流 (DC) 電力を交流 (AC) 電力に変換する電気機器のこと。
この変換によって、モーターの回転速度やポンプの流量などを自由に制御が可能となる。
インバータの仕組み

インバータの基本的な仕組みは、半導体スイッチ(IGBTやMOSFETなど)を高速にオン/オフすることで
直流電圧をパルス状に切り刻み、これをPWM (Pulse Width Modulation)制御によって交流の波形を作り出すこと。
- 整流部: 外部から入ってきた交流電力をダイオードなどで直流に変換する。
- 平滑部: 整流された脈流をコンデンサで滑らかな直流にする。
- インバータ部: 平滑された直流電力を、スイッチング素子を使って所望の周波数と電圧の交流電力に変換する。
インバータの詳細な仕組み
下記図のようにインバータ装置は前段部と後段部に分かれており
交流から直流に変換する前段部の「コンバータ回路」と
直流から交流に変換する後段部の「インバータ回路」によって構成されている。
広い意味でのインバータ装置とは
コンバータ回路とインバータ回路がセットで使われて「交流→交流」への変換になるのに対し
個別のインバータは回路や機能を示しているので、「直流→交流」の変換になる。
このように、とらえ方により「インバータ」の意味が異なってくる。

インバータにおける力率の定義

正弦波における力率は上記図のように
電圧と電流の位相差φにより求められる。
しかし、インバータの入力電流は下記図のように
高調波を含んだひずみ波形のため、位相角で定義することはできない。

このため、ひずみ波の力率については、位相角ではなく
有効電力と無効電力を用いて表す必要がある。
ここで、下記左図のような電圧(基本波)と電流(ひずみ波)の力率を考える。
電流(ひずみ波)を各次数に分解すると下記右図のようになるが
この場合、有効電力を発生するのは電圧と電流が同じ周波数の場合のみになる。


したがって、基本波電圧と基本波電流のみが有効電力を発生し
基本波電圧と高調波電流の間で有効電力が発生することはなく、すべて無効電力となる。
=高調波が増えるほど(波形がひずむほど)無効電力が増加することになる。
力率は、有効電力と無効電力を使用すると次式で表せられる。

この式から、高調波が増えるほど無効電力が増加するので、力率が悪くなることになる。
インバータの力率改善方法

一般に、正弦波の力率改善は進相コンデンサを設置し
基本波の電圧と電流の位相差を小さくする方法がとられる。
一方、高調波については前述のように位相差の改善ではないので
進相コンデンサの設置は効果がない。
ひずみ波の力率低下は高調波が原因なので、高調波を抑制(ひずみ波形の改善)することが力率改善になる。
インバータで高調波を抑制するには、下記図のようにリアクトルを設置する方法がある。

① ACリアクトル
インバータの電源側にACリアクトルを設置して
線路インピーダンスを大きくし、高調波を抑制する。
これにより、入力力率を0.9程度に改善できる。
最も代表的な高調波対策だが、電源側の電圧降下が比較的大きい(5%程度)ので
電動機のトルク不足などに注意が必要。
② DCリアクトル
インバータの直流回路にDCリアクトルを設置して
インピーダンスを大きくし、高調波を波を抑制する。これにより、入力力率を0.95程度に改善できる。
直流回路に接続されるために電圧降下は直流抵抗分のみ(1%以下)となり
電動機のトルク不足などの影響はほとんどない。
} また、ACリアクトルより小型軽量で力率改善効果も優れている。
③ AC/DCリアクトル併用
電源側にACリアクトル、直流回路にDCリアクトルを設置して
インピーダンスを大きくし、高調波を抑制する。
ACリアクトルとDCリアクトルを併用するため、高調波抑制効果がより大きくなる。
参考資料
新電気 2023年11月号現場の疑問解決塾 「インバータ」より画像引用

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