変圧器やコンデンサに用いられるブッシングは
これらの電気機器において非常に重要な役割を果たす部品。
ブッシングを一言で表すと
「高電圧を安全に機器の内部と外部とで導通させるための筒状の碍子(がいし)」のこと。
ブッシングの役割と重要性

① 絶縁(がいし)機能
機器の内部にある高電圧の導体と
外部の機器本体(タンク、筐体、アース電位)との間に
非常に効果的な電気的絶縁を提供する。
もしブッシングがないと高電圧の電気が機器の金属筐体へと流れてしまい
地絡や短絡、絶縁破壊を引き起こし重大な事故(発火など)につながる危険性がある。
② 導通と支持機能
変圧器やコンデンサの内部にある巻線や高圧リード線から
外部の送電線や開閉装置へ、高電圧・大電流を安全に流すための通路となる。
※引き出し導体を機械的に支持・固定する役割も果たす。
ブッシングの主な種類と構造

ブッシングは、使用する電圧の高さによって
主に「磁器ブッシング」と「コンデンサブッシング」に大別される。
① 低電圧ブッシング(磁器ブッシング)
比較的低い電圧(例:数kV〜数十kV)で使用される。
構造
単純な磁器(セラミック)製の筒状の絶縁体。
導体はこの筒の中を通る。
特徴
絶縁体を厚くしたり、長くしたりすることで
導体と機器タンク間の絶縁距離を確保する。
外部表面には、絶縁距離を長くし、雨水や塩害による表面汚損での
絶縁低下を防ぐためのひだ状の傘(スカート)が設けられている。
② 高電圧ブッシング(コンデンサブッシング)
高電圧(例:数十kV以上)で使用される。
単純な磁器ブッシングでは、電圧が高すぎるとブッシング内部の絶縁体に電界が集中しすぎて破壊されてしまう。
これを防ぐために、特殊な構造になっている。
構造
内部にコンデンサ形コアと呼ばれる特殊な絶縁体が組み込まれている。
これは、導体の周りに金属箔または半導電層(電位を等化する層)を
何層にも重ねて巻き付けた構造をしている。
この構造全体が、外部のがい管(磁器またはポリマー)で覆われ
内部には絶縁油や絶縁性ガス(SF6ガスなど)が封入されていることが多い。
コンデンサ形の仕組み
- 多層の金属箔が直列に繋がったコンデンサのように機能することで
導体から機器タンクまでの電圧を各層にほぼ均等に分圧し
絶縁体にかかる電界の集中を緩和(電界の均一化)する。
これにより、ブッシングを小型・コンパクトに設計しつつ
高い絶縁信頼性を確保している。
事故・劣化と対策

ブッシングは機器の外部に露出しているため、劣化や事故が発生しやすい重要部品となる。
主な劣化・事故の原因
汚損によるフラッシオーバ
海岸付近や工業地帯では、がい管表面に塩分や塵埃が付着し
雨や霧で濡れると導電性が生じる(塩害・汚損)。
これにより漏れ電流が流れ、最終的に閃絡(せんらく、フラッシオーバ)が
発生して絶縁破壊に至ることがある。
内部絶縁破壊
経年劣化による絶縁油の劣化や水分の浸入
コンデンサコアの欠陥などにより、内部絶縁が破壊される。
機械的損傷
地震や外部からの衝撃、リード線接続部の熱膨張・収縮などによる機械的ストレスで
がい管にひびが入ったり、シール部(ガスケット)から油やガスの漏洩が発生したりする。
事故防止のための対策
- 耐塩がいし/がい管の採用
汚損対策として、ひだ(傘)の形状や大きさを工夫した
耐塩がいし(スモッグがいし、長幹がいしなど)を採用する。 - 表面処理
がい管表面にシリコーンコンパウンドを塗布しその撥水性や
塩分を包み込む「アメーバ作用」で絶縁低下を防止する。 - 定期的な洗浄
塩分付着量が規定値を超えた場合に、がいし洗浄(活線洗浄を含む)を実施する。 - 定期点検
ブッシングの誘電体損失(tanδ)や静電容量を測定し
内部絶縁の劣化状態を診断するほか、熱画像診断で過熱箇所の有無を確認する。

コメント