倍率器とは
直流電圧計の測定範囲を広げるために、電圧計に直列に接続する抵抗器のこと。
本来、電圧計には測定できる最大電圧(フルスケール)が決まっているが
倍率器を使うことで、その限界を超えた高い電圧を安全に測定できるようになる。
概略
電圧計に直列に外部抵抗を接続し、測定電圧の一部を計器に分圧することによって
測定範囲を拡大する。この外部抵抗は大きくして,電圧を多く加える。
また,電圧計の内部抵抗は小さくし,分担電圧を小さくして計器の破損を防ぐ。
倍率器の仕組み

電圧計には「内部抵抗」というものがあり、電圧計に高い電圧を直接かけると
許容以上の電流が流れて故障してしまう。
そこで、電圧計と直列に大きな抵抗(倍率器)をつなぐことで
※下記参照
測定したい電圧の大部分をその抵抗に分担させ、電圧計自体には許容範囲内の電圧しかかからないようにする。
これは電気回路の「電圧の分圧」の原理を利用したもの。

倍率(n)と抵抗値の計算

どれくらいの抵抗をつなげば良いかは
以下の計算式で求められる。
変数の定義
- v :電圧計の最大目盛(定格電圧)
- r :電圧計の内部抵抗
- V :測定したい電圧
- R :倍率器の抵抗値
- n :倍率(V / v、=何倍の電圧を測りたいか)
計算式
倍率器の抵抗値 R は、次の公式で表される。
R = (n – 1)r
【例】
最大 10Vまで測れる内部抵抗 1kΩ の電圧計を使って
100V を測りたい場合。
- 倍率 n = 100V/ 10V= 10 倍
- 倍率器の抵抗 R = (10 – 1) × 1kΩ= 9kΩ
→9kΩ の抵抗を直列につなげば、100V まで測定可能になる。
図を用いた計算方法と具体例

「測定電圧を V,計器電圧を V1,外部抵抗に加わる電圧を V2,内部抵抗を Rv,外部抵抗を Rm とする。
① V = V1 + V2(分圧される)
② 抵抗 Rv と Rm は直列となる
③ ②より各電圧は抵抗の比になる
④ 倍率 = V / v
【例題】
上図に示す回路において,内部抵抗 Rv [kΩ],最大目盛 100V の永久磁石可動コイル形電圧計を
最大電圧 500V まで測定するための倍率器の抵抗 Rm [kΩ] の値はいくらか。
ただし,Rv = 1kΩとする。
【解答】
①で,測定範囲は 500V だから,V は 500V,電圧計の最大目盛が 100V だから,V1 が 100V である。
500V が分圧されるから,
V2 = E – 100 = 500 – 100 = 400V
②,③で
抵抗が直列だから,各電圧は抵抗の比を適用して
Rm = Rv ×400/100 = 1 × 4 = 4kΩとなる.
倍率器の特徴と注意点

- 直列接続
必ず電圧計に対して「直列」に接続する。 - 高精度が必要
測定精度を保つため、倍率器には温度変化に強く、精度の高い抵抗器が使用される。 - 分流器との違い
電流計の測定範囲を広げるものは「分流器(シャント)」と呼ばれ
こちらは「並列」に接続する。
倍率器と分流器の比較表
| 項目 | 倍率器 (Multiplier) | 分流器 (Shunt) |
| 対象 | 電圧計 (V) | 電流計 (A) |
| 接続方法 | 直列 (Series) | 並列 (Parallel) |
| 目的 | 電圧の測定範囲を拡大 | 電流の測定範囲を拡大 |
参考資料
イラストでわかる電験3種疑問解決道場 武智昭博著 p55「倍率器の倍率がらみの計算は, どのように考えればいいの?」より一部引用

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