電圧とは
電圧(でんあつ、Voltage)は、電気回路において
電気エネルギーのポテンシャルの差を表す物理量のこと。
電圧の高い点から低い点へ電流が流れる。

使用電圧(公称電圧)について

使用電圧は、公称電圧ともいい、その電路を代表する線間電圧の値をいう。
例えば家庭のコンセントの電圧は100 Vであり
街中の電柱に支持されている高圧配電線の電圧は6600 Vであることが知られている。
しかし、実際には電流が流れることによって電圧降下が発生し
厳密にいうとどの場所でも常に100 Vや6600 Vに維持されているわけではない。
そこで、これらの電圧を指すときには、この電圧の変動を考慮せず
代表的な値を用いて「100 V」「6600 V」と呼んでいる。
=「公に称されている電圧値」という意味で、これを「公称電圧」という。
より具体的には、以下の2つの意味合いで使われる。
電気機器(電池、電源ユニットなど)における公称電圧

- 目安となる電圧
その機器が通常動作する際の、おおよその電圧を示す値。 - 初期電圧や放電による変動
実際に使用する際には、満充電直後などで公称電圧よりも高い電圧を示したり
放電が進むにつれて電圧が低下したりすることがある。
具体例
- 乾電池の公称電圧は1.5Vだが、新品の際は1.6V程度を示すことがある。
- 自動車のバッテリーの公称電圧は12Vだが、充電状態によって11V台後半から13V台後半まで変動する。
- リチウムイオン電池の公称電圧はセルあたり3.6Vや3.7Vなど、種類によって異なる。
電力系統(送電線、配電線など)における公称電圧

- 系統を代表する電圧
その電力系統の標準的な電圧を示す値。 - 運転状態による変動
実際の送電電圧は、負荷の状況などによって公称電圧から多少変動する。
具体例
- 日本の家庭用配電線の公称電圧は100Vまたは200V。
- 送電線の公称電圧は、66kV、154kV、500kVなど、送電する電力量や距離によって様々な種類がある。
公称電圧の種類(電力系統の例)
電力系統における公称電圧は、送電・配電の規模や目的に応じて様々な種類がある。
日本国内の主な公称電圧の例は以下の通り。
- 低圧: 100V、200V(一般家庭や小規模な事業所など)
- 高圧: 3.3kV、6.6kV(中小規模の工場やビルなど)
- 特別高圧: 22kV、66kV、110kV、154kV、187kV、220kV、275kV、500kV(発電所から変電所への送電や、大規模な工場などへの直接供給)
定格電圧について

定格電圧(ていかくでんあつ)とは
電気機器や電子機器が安全かつ正常に動作するように設計された電圧の範囲を示す値。
機器がその性能を保証できる電圧の範囲の上限と下限を示すことが多い。
定格電圧の重要性
- 安全な使用
定格電圧を超える電圧で使用すると
機器の絶縁破壊、発熱、発火などの危険な状態を引き起こす可能性がある。 - 正常な動作
定格電圧の範囲内で使用することで
機器は設計された通りの性能を発揮できる。
電圧が低すぎると、正常に動作しないことがある。 - 機器の寿命
定格電圧を守って使用することで、機器の寿命を長く保つことができる。
定格電圧の表示
電気機器には、通常、本体や取扱説明書に定格電圧が記載されている。
具体例
- AC100V: 交流100ボルトで使用するように設計されている。
- DC12V: 直流12ボルトで使用するように設計されている。
- 100-240V AC 50/60Hz: 交流100ボルトから240ボルト
周波数50ヘルツまたは60ヘルツで使用できるように設計されている(ユニバーサル電源)。
定格電圧と公称電圧の違い
公称電圧は、システムや機器を代表するおおよその電圧を示す「名目上の電圧」。
一方、定格電圧は、機器が安全かつ正常に動作するための「保証された電圧範囲」を示す。
具体例
- 公称電圧: 「この電池は1.5Vのもの」という、その電池の代表的な電圧。
- 定格電圧: 「この機器は1.3Vから1.7Vの範囲で動作を保証する」という、安全に使える電圧の範囲。
実際には、新品の電池や満充電された電池の電圧は公称電圧よりも若干高く
使用するにつれて電圧は低下していく。
定格電圧は、このような電圧変動を考慮して、機器が安全に動作できる範囲を示している。
定格電圧の種類(例)
定格電圧は、使用する機器や国、地域によって様々な種類がある。
- 低圧:
- 日本:AC100V、AC200V
- 海外:AC110V、AC120V、AC220V、AC230V、AC240V など
- 直流:12V、24V、48V など(電子機器、自動車など)
- 高圧: AC3.3kV、AC6.6kV など(工場、ビルなどの受電設備)
- 特別高圧: AC22kV以上(発電所からの送電など)
最大使用電圧について

最大使用電圧とは、通常の使用状態において電路に加わる最大の線間電圧の値をいう。
通常、線路電圧は公称電圧よりも低くなることが多いが
夜間やオフピーク時などに軽負荷・無負荷となる場合
フェランチ効果と呼ばれる送電端電圧よりも受電端電圧が高くなる現象が起こることがある。
これを考慮し、使用電圧を超えてどの程度まで大きくなり得るかを表すものが最大使用電圧である。
最大使用電圧は、使用電圧(公称電圧)に加る係数を乗じて算出されるが
その係数は使用電圧の区分によって異なる。
これをまとめたのが下記表となる。

表:最大使用電圧の算出に用いる係数
例えば公称電圧6600 Vの高圧配電線路の最大使用電圧は
「1000 Vを超え500000 V未満」のときの「1.15/1.1」という係数を乗じればよいので、
6600×1.11.15=6900[V]
となる。
最大使用電圧の重要性
- 安全性の確保
最大使用電圧を超えて使用すると、絶縁破壊、漏電、感電、火災などの事故につながる危険性がある。 - 機器の保護
過電圧は機器の部品に過大なストレスを与え、故障や寿命の低下の原因となる。
最大使用電圧以下で使用することで、機器を保護し、長期間にわたって安全に使用できる。 - 規格と基準
電気機器や電力系統は、関連する規格や基準によって最大使用電圧が定められている。
これは、機器の安全性と互換性を確保するために重要となる。
最大使用電圧の表示
電気機器には、定格電圧と合わせて、または単独で最大使用電圧が記載されていることがある。
具体例
- 定格電圧:AC100V、最大使用電圧:AC110V
- 最大使用電圧:DC24V
この場合、たとえ瞬間的であっても記載された最大使用電圧を超える電圧を加えてはいけない。
電力系統における最大使用電圧
電力系統においても、各電圧階級ごとに最大使用電圧が定められている。
これは、系統の安定運用と安全確保のために重要となる。
例えば、日本の低圧配電線(公称電圧100V)の最大使用電圧は
一般的に公称電圧よりも少し高い値に設定されている。
これは、負荷変動などによる電圧変動を考慮したもの。
最大使用電圧と定格電圧、公称電圧の関係
- 公称電圧
システムや機器を代表する名目上の電圧。 - 定格電圧
機器が安全かつ正常に動作するように設計された電圧範囲。通常、公称電圧を含む。 - 最大使用電圧
連続して安全に使用できる最高の電圧。
定格電圧の上限またはそれよりもわずかに高い値で設定される。
耐電圧について

耐電圧(たいでんあつ)とは、電気機器や電子部品などが
規定の条件下で、一定時間、特定の高い電圧に耐えることができる能力を示す値。
これは、機器の絶縁性能を表す重要な指標であり、感電や漏電といった事故を防ぎ
安全性を確保するために定められている。
耐電圧の重要性
- 安全性の確保
機器が通常の使用状態だけでなく
一時的な過電圧に対しても絶縁破壊を起こさずに耐えることができることを保証する。
これにより、利用者の安全が確保される。 - 信頼性の向上
高い耐電圧性能を持つ機器は、外部からのノイズや一時的な電圧変動に対しても
安定して動作し、故障しにくいという信頼性につながる。 - 規格への適合
多くの安全規格や製品規格において、耐電圧試験が義務付けられており
製品がこれらの規格に適合していることを証明するために重要な項目となる。
耐電圧の試験方法
耐電圧試験は、通常、以下の手順で行われる。
- 試験電圧の設定
製品の規格や種類に応じて、定められた試験電圧を設定する。
この電圧は、通常の使用電圧よりもはるかに高い値に設定される。 - 電圧の印加
試験対象の絶縁部分に、設定された試験電圧を一定時間(通常は数秒から数分)印加する。
電圧は、急激にではなく、徐々に上昇させていく。 - 良否判定
試験中に絶縁破壊(スパーク、放電、異常な電流の流れなど)が発生しないかを確認する。
もし絶縁破壊が起こらなければ、その製品は規定の耐電圧性能を満たしていると判断される。
試験箇所は、製品の構造や安全規格によって異なるが
一般的には以下のような箇所に対して行われる。
- 充電部と接地部(筐体など)の間
- 一次回路と二次回路の間
- 端子間
耐電圧と絶縁抵抗の違い
耐電圧試験と絶縁抵抗試験は、どちらも電気機器の絶縁状態を確認するための試験だが
目的と試験方法が異なる。
- 耐電圧試験
高い電圧を印加し、絶縁破壊が発生しないかを確認することで
絶縁の強度を評価する。瞬間的な過電圧に対する耐性を確認する意味合いが強い。 - 絶縁抵抗試験
比較的低い直流電圧を印加し、流れる電流を測定することで
絶縁物の抵抗値を評価する。絶縁物の劣化や漏洩電流の有無を確認する意味合いが強い。
※どちらの試験も重要であり、製品の安全性を確保するためには、両方の試験が行われることがある。

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