変圧器のタップ切り替えとは?
変圧器のタップ切り替えとは、変圧器の巻数比(一次巻数と二次巻数の比)を意図的に変更することで
二次側の電圧を調整する機能のこと。これにより、一次側の電圧が変動したり
二次側の負荷状況が変わったりしても、二次側の電圧を所定の値に維持したり
最適な電圧に調整したりすることが可能になる。

タップ切り替え端子台例
タップ切り替えの必要性

送電線での電圧降下補償
発電所から負荷(工場や家庭など)へ電力を送る送電線には
抵抗やリアクタンスがあるため、電流が流れると電圧降下が発生する。
負荷が大きくなると電圧降下も大きくなり、負荷端の電圧が低下する。
これを補償し、常に適切な電圧を供給するために
変電所の変圧器でタップを切り替えて電圧を昇圧または降圧を行う。
一次側(系統側)電圧の変動への対応
発電量の変化や系統全体の負荷状況によって
変圧器の一次側(電源側)の電圧が変動することがある。
この変動に対して、二次側の電圧を一定に保つためにタップ切り替えが行われる。
季節や時間帯による負荷変動への対応
季節や時間帯によって電力消費量(負荷)は大きく変動する。
夏場のエアコン使用時や冬場の暖房使用時など
負荷がピークになる時間帯には電圧降下が大きくなるため
タップを切り替えて電圧を維持する。
設備の新設・増設への対応
新たな負荷設備が接続されたり、既存の設備が増設されたりすると
系統の電圧特性が変化することがある。これに対応するためにもタップ調整が必要となる。
タップ切り替えの方式

タップ切り替えには、大きく分けて2つの方式がある。
無励磁タップ切り替え (No-Load Tap Changer: NLTC または De-Energized Tap Changer: DETC)

- 特徴
変圧器に電流が流れていない状態(無励磁状態、つまり変圧器を停止させてから)で
タップを切り替える方式。 - 構造
タップは通常、一次側(高圧側)の巻線に設けられる。
タップの切り替えは、変圧器が運転を停止している間に手動で行われるか、専用の機構で切り替える。 - 用途
比較的、電圧変動が少ない系統や、季節ごとの電圧調整など
頻繁な切り替えが不要な場所に用いられる。
例えば、配電用変圧器の一次側タップなどがこれに該当する。 - 利点
構造が簡単で安価。 - 欠点
活線状態では切り替えができないため、電力供給を一時的に停止させる必要がある。
負荷時タップ切り替え (On-Load Tap Changer: OLTC または Under Load Tap Changer: ULTC)
- 特徴
変圧器に電流が流れている状態(活線状態、負荷運転中)で
タップを切り替えることができる方式。 - 構造
タップは通常、一次側(高圧側)の巻線に設けられ
特別なタップ切り替え器(OLTC機構)が付属している。
この機構は、タップを切り替える際に回路を開くことなく
瞬間的に短絡させて切り替えることで、無停電での調整を可能にしている。 - 用途
電圧変動が大きく、頻繁な電圧調整が必要な送電用・変電用変圧器に広く用いられる。 - 利点
電力供給を停止することなく、連続的に電圧調整が可能。
自動制御と組み合わせることで、常に最適な電圧を維持できる。 - 欠点
構造が複雑で高価。
また、定期的なメンテナンスが必要。
タップ切り替え時にアーク(火花)が発生するため、切り替え器内部は絶縁油中にあり
アークを消弧する機構が備わっている。
タップの具体的な位置と数

- 位置
一般的には、高圧側巻線に設けられることが多い。
これは、高圧側の方が電流が小さく、タップ部分での電流遮断が容易であるため。 - 数
変圧器の定格や用途によって異なるが
通常、基準となるタップ(定格タップ)を中心に、上下に数段階のタップが設けられている。

モールド変圧器タップ表示記号の意味

上記図は、定格容量が1000 kV-Aの三相変圧器のタップ表示例を示している。
電圧の前に付いている記号は以下の意味を持っている。
- 「R」: その電圧が定格電圧であることを示す。
- 「F」: 全容量タップ電圧であることを示す。
- 記号なし: 低減容量タップ電圧であることを示す。
全容量タップとは、変圧器を定格容量で運転できるタップを指す。
一方、低減容量タップとは、運転する容量を低減しなければならないタップのこと。
上記図の例では、タップ番号5が低減容量タップに該当する。
このタップでは、最も近い全容量タップであるF6300 Vの電流91.6 Aを超えて通電することはできない。

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