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需要率についての基礎知識まとめ

需要率(じゅようりつ)は、電気設備を設計したり、電力会社との契約電力を決めたりする上で
非常に重要な指標となる。
持っている電気設備の能力に対して、実際に同時にどれだけの電力を最大で使用しているかを示す割合のこと。

下図は負荷変動の状況を時間的に表した 負荷曲線例。
需要家の最大電力はすべての設備が同時には使用されないので、設備容量より小さいのが普通となる。
この両者の比が 需要率となる。
各設備の需要率がわかれば、その設備の最大電力を予想が可能となる。

目次

需要率の定義と計算式

需要率は、以下の計算式で表される。

  • 最大需要電力 (kW または kVA)
    ある一定期間(例えば1日、1ヶ月、1年間など)においてその需要家が
    最も多くの電力を同時に使用した瞬間の電力を指す。これは、デマンドメータなどで計測される。
  • 設備容量の合計 (kW または kVA)
    その需要家が保有している全ての電気機器の定格容量
    (銘板に記載されている消費電力など)を合計した値

需要率が表すもの

需要率は
持っている電気設備(設備容量)を
最も電気を使う瞬間にどれだけ効率的に使っているか
」を示します。

例 

  • 設備容量の合計が100kWの工場があったとする。
  • ある期間で、最大で同時に使用した電力が60kWだったとする。
  • この場合の需要率は、(60kW/100kW)×100=60% となる。

これは、この工場が全ての設備を同時にフル稼働させることはなく
最大でも設備全体の60%の能力しか使っていないことを意味する。

需要率が重要性について

電気設備の最適設計

●工場やビルを設計する際、全ての電気機器が同時にフル稼働する状況は稀であり
もし設備容量の合計に合わせて変圧器配線ブレーカーを選定すると
実際には必要以上に大きな設備を設置することになり、初期費用が無駄になる。

●需要率を考慮することで、実際に最大で必要となる電力に見合った
最適な容量の変圧器、幹線(太い配線)、ブレーカーなどを選定できる。
これにより、設備投資コストを削減し、過大な設備による無駄を省くことができる。

電力契約の適正化

●電力会社との契約電力(基本料金の算定基準となる電力)は
需要家の最大需要電力に基づいて決定されることが一般的
※デマンド契約など

●需要率を把握することで、自社の最大需要電力の傾向を予測し、電力会社との契約電力を適正な値に設定できる。
過大な契約電力は基本料金の無駄につながり、低すぎる契約電力は
契約電力を超えた場合に割増料金が発生したり、ブレーカーが遮断されたりする原因となる。

省エネルギー対策

需要率を分析することで、どの時間帯に、どの設備が、どれくらいの電力を消費しているかを把握できる。
これにより、無駄な電力消費を特定し、電気機器の効率的な運用方法や、省エネルギー機器の導入
検討する際の重要なデータとなる。

需要率の一般的な傾向

需要率は、建物の種類や用途によって一般的な傾向がある。

  • 一般家庭: 50%~70%程度
    全ての家電製品を同時に使うことは稀なため。
  • オフィスビル: 60%~80%程度
    照明、空調、OA機器など。時間帯によって使用状況が大きく変動する。
  • 工場: 70%~90%程度(操業状況による)
    生産ラインの稼働状況によって大きく変動する。
    24時間稼働の工場であれば高くなる傾向にある。

需要率と混同しやすい概念との違い

電気設備に関連する似たような指標として、「負荷率」や「不等率」がある。

需要率 (Demand Factor)

  • 最大需要電力 / 設備容量の合計
  • ある瞬間において、設備がどれだけ使われているかの効率の最大値
  • 「設備が持っている能力を、最も厳しい瞬間にどれだけ引き出しているか」を表す。

負荷率 (Load Factor)

  • ある期間の平均需要電力 / その期間の最大需要電力
  • ある期間全体において、設備がどれだけ効率的に利用されているかを示す。
  • 最大で使われる電力に対して、平均的にどれくらい使っているか」を表す。
    負荷率が高いほど、電力の使用が平準化されており、設備の利用効率が良いと言える。

不等率 (Diversity Factor)

  • 個々の需要家の最大需要電力の合計 / 合成最大需要電力
  • 複数の需要家や複数の負荷設備がある場合、それらの最大需要電力が同時に発生しないことを考慮する係数。
  • 例えば、複数の部屋のエアコンの最大需要電力がそれぞれ異なっていても、それらが同時にピークを迎えることはない、という考え方。
    これにより、全体の変圧器や幹線を個々の最大電力の単純合計よりも小さく設計できる。

需要率、負荷率、不等率の違い一覧表

需要率を考慮した設計の例

例えば、ある工場に以下の設備が設置されている場合。

  • モーターA: 50kW
  • モーターB: 30kW
  • 照明: 20kW
  • その他: 10kW
    • 設備容量の合計 = 50 + 30 + 20 + 10 = 110kW

仮この工場が、経験則や過去のデータから需要率が70%と見込まれる場合、

最大需要電力の予測 = 設備容量の合計 × 需要率 = 110kW × 0.70 = 77kW

となる。 この予測される最大需要電力77kWに基づいて、電力会社との契約電力を決定したり
変圧器や主幹ブレーカーの容量を設計したりすることができる。
もし需要率を考慮せず110kWとして設計すると、必要以上に大きな設備を選定してしまうことになる。

参考資料

新電気2019年 11月号「厳選テーマをいもづる式に徹底解説電験三種 基礎鍛錬第63回 電気施設管理1

より画像引用

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