「残留電圧」は、電気回路や電子機器において、電源が切断された後も
コンデンサなどの蓄電素子に電荷が残ることで発生する電圧や
半導体素子などがON状態を維持する際に発生する電圧など
様々な文脈で使われる言葉のこと。
目次
電源を切った後の残留電圧(残留電荷によるもの)

最も一般的に「残留電圧」という言葉が使われるのはこのケースとなる。
電気製品の電源プラグを抜いた後、内部のコンデンサなどに蓄積された電荷が完全に放電されずに
残ってしまうことで発生する電圧を指す。
- 原因
主に電源回路のコンデンサに蓄えられた電荷。
コンデンサは電気を蓄える部品であり、電源が切れてもすぐに電荷がなくなるわけではない。 - 危険性
この残留電圧が高い場合、電源プラグの刃に触れた際に感電する危険性がある。
特に、大容量のコンデンサを使用している機器や、電源オフ後の放電回路が適切に
設計されていない機器で問題となることがある。 - 安全規格
電気用品安全法(電安法)やIEC 60335-1などの安全規格では、電源プラグを引き抜いた後
一定時間(例えば1秒後)にプラグ刃間の電圧が特定の安全電圧(例えば45V)以下に
なるように規定されている。この残留電圧が規定値を超える場合
製品は安全基準を満たしていないと判断される。 - 測定
専用の残留電荷測定装置を用いて、電源遮断後のプラグ刃間の電圧変化を測定する。
ピーク電圧で電源を遮断し、設定時間後の電圧を確認することが一般的。
半導体素子(スイッチなど)のON時残留電圧

半導体を用いたスイッチング素子(トランジスタ、MOSFETなど)が
ON状態(導通状態)になった際に、その素子の両端にわずかに残る電圧降下を
「ON時残留電圧」または単に「残留電圧」と呼ぶことがある。
- 原因
半導体素子には完全に抵抗がゼロになる理想的なスイッチとは異なり
導通状態でもわずかながら抵抗成分が存在する。
この抵抗によって、電流が流れる際に電圧降下が生じる。 - 影響
この残留電圧は、負荷にかかる実際の電圧を低下させたり
素子自体で熱を発生させたりする原因となる。
例)24Vの電源で0.5VのON時残留電圧がある場合、負荷には23.5Vしかかからないことになる。 - 対策
半導体素子の選定や回路設計において、このON時残留電圧を考慮し
負荷の動作電圧や素子の発熱許容範囲内に収まるように設計する必要がある。
雷保護装置(SPD)における残留電圧

サージ保護デバイス(SPD: Surge Protective Device)において
「残留電圧」は、放電電流が通過した際にSPDの端子間に発生する電圧のピーク値を指す。
- 役割
SPDは、雷サージなどの過電圧から機器を保護するために設置される。
通常時は回路に影響を与えないが、過電圧が発生すると回路を短絡させて電流を大地に逃がす。 - 重要性
SPDが動作している間、完全に電圧を0にするわけではなく、一定の電圧がSPDの両端に残る。
この残留電圧が、保護対象の機器の耐電圧よりも低い値である必要がある。
低い残留電圧ほど、より効果的な保護が期待できる。
誘導電動機などの残留電圧

三相誘導電動機が運転中に電源を遮断された場合
すぐに電圧が零にならず、いわゆる「残留電圧」が発生することがある。
- 原因
電動機の回転子が持つ慣性によって、電源が切れてもすぐに停止せず回転を続けるため
回転子に鎖交する磁束が残り、これが残留電圧として現れる。 - 影響
この残留電圧は、再投入時の過電圧や、他の機器への影響を考慮する必要がある場合がある。

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