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キャパシタンスについての基礎知識まとめ

キャパシタンスは、電気回路における重要な概念の一つで
電荷を蓄える能力を示す量のこと。この電荷を蓄える素子がキャパシタ(コンデンサ)のこと。

目次

キャパシタンスの定義

キャパシタンス C は
キャパシタに蓄えられた電荷 Q と
その両端にかかる電圧 V の比として定義される。

C=V/Q​

  • C: キャパシタンス(単位:ファラド [F])
  • Q: 蓄えられた電荷(単位:クーロン [C])
  • V: キャパシタ両端の電圧(単位:ボルト [V])

この式から、1ファラドは1クーロンの電荷を蓄えるのに1ボルトの電位差が
必要なキャパシタンスに相当することがわかる。ファラドは非常に大きな単位であるため
実際にはマイクロファラド (μF, 10−6 F)、ナノファラド (nF, 10−9 F)、ピコファラド (pF, 10−12 F) といった
小さい単位がよく用いられる。

キャパシタの構造と原理

一般的なキャパシタは、2枚の導体板(電極)誘電体(絶縁体)を
挟んで対向している構造をしている。

  1. 電荷の蓄積
    電圧を印加すると、導体板の一方に正の電荷が
    もう一方に負の電荷が引き寄せられて蓄積される。
  2. 電界の発生
    導体板間に電界が発生し、この電界にエネルギーが蓄えられる。
  3. 誘電体の役割
    誘電体は電極間の直接的な電荷の流れ(電流)を防ぎながら
    電界を強め、より多くの電荷を蓄えられるようにする。
    誘電体の種類によって、キャパシタンスの値が大きく変わる。
    誘電率が高い誘電体ほど、同じ面積・厚さでもより大きなキャパシタンスが得られる

キャパシタンスに影響を与える要因

キャパシタンスの値は、以下の要因によって決定される。

  1. 電極の面積 (A)
    電極の面積が大きいほど、より多くの電荷を蓄えることができるため
    キャパシタンスは大きくなる。

  2. 電極間の距離 (d)
    電極間の距離が短いほど、電界が強くなり、より多くの電荷を蓄えることができるため
    キャパシタンスは大きくなる。

  3. 誘電体の誘電率 (ϵ)
    誘電体の誘電率が高いほど、同じ電圧でより多くの電荷を蓄えることができるため
    キャパシタンスは大きくなる。
    ※誘電率 ϵ は、真空の誘電率 ϵ0​ と比誘電率 ϵr​ の積で表される (ϵ=ϵ0​ϵr​)。

これらの関係は、平行平板キャパシタの場合、以下の式で表される。

キャパシタの主な用途

  1. 平滑回路: AC信号をDC信号に変換する際に、脈流成分を除去し
    電圧を安定させるために用いられる(整流回路の後ろ)。

  2. フィルタ回路: 特定の周波数成分を通過させたり、阻止したりする目的で用いられる
    (例:高周波ノイズの除去、オーディオのトーンコントロール)。

  3. タイミング回路/発振回路: RC時定数(抵抗とキャパシタンスの積)を利用して
    時間の遅延や信号の周期を制御するために用いられる。

  4. DCカット/AC結合: DC成分を阻止し、AC成分のみを通過させたい場合に使用される。

  5. 電源の安定化(デカップリング): ICなどのデジタル回路の電源ラインに接続し
    瞬間的な電流変化による電圧変動を抑え、安定した電源を供給するために用いられる。

  6. 電荷の貯蔵: カメラのフラッシュや、一時的な電力供給が必要なアプリケーション
    (例:メモリバックアップ)に利用される。

  7. 共振回路: インダクタンスと組み合わせて特定の周波数で共振する回路を構成し
    ラジオの同調回路などに用いられる。

キャパシタのメリット・デメリット

キャパシタのメリット

  1. 電荷の高速な蓄積と放出:
    • 瞬時的な電力供給
      バッテリーとは異なり、キャパシタは非常に短い時間で電荷を充電し
      また瞬時に放出すること
      ができる。
      これは、デジタル回路(例:CPUの動作時)で一時的に大きな電流が必要な場合や
      カメラのフラッシュのように瞬間的に大電力を必要とするアプリケーションで非常に有効


    • 電圧安定化(デカップリング)
      電源ラインに接続することで、回路が急激に電流を消費した際に発生する電圧降下を補償し
      電源電圧を安定させる。これにより、ICなどの誤動作を防ぐ。


  2. 周波数特性の利用:
    • DC成分のカット(AC結合)
      キャパシタは直流電流を遮断し、交流電流のみを通過させる性質がある。
      これにより、信号の直流バイアスを除去し、交流成分のみを次の回路ステージに伝えることができる
      (例:オーディオ回路の入出力段)。


    • フィルタリング
      抵抗やインダクタと組み合わせることで、特定の周波数帯域の信号を通過させたり
      阻止したりするフィルタ回路
      (ローパスフィルタ、ハイパスフィルタ、バンドパスフィルタなど)
      を構成できる。これはノイズ除去や信号整形に不可欠となる。
  3. エネルギーの一時的な貯蔵
    • 停電時の短時間のバックアップ電源(特にスーパーキャパシタ)
      または電源投入時の突入電流緩和など、一時的なエネルギー貯蔵源として機能する。


  4. 比較的長寿命・高信頼性
    • 電解コンデンサなどを除けば、多くの種類のキャパシタ(セラミック、フィルムなど)は
      適切な環境下で使用される限り、比較的長寿命で高い信頼性を持っている。
      バッテリーのように充放電サイクルによる劣化が少ない傾向がある。


  5. 構造のシンプルさ:
    • 基本的に2枚の電極と誘電体というシンプルな構造のため、製造が比較的容易で
      大量生産に適しており、コストを抑えることができる。


  6. 小型化の貢献:
    • 特に積層セラミックコンデンサなどは非常に小型でありながら
      高容量を実現できるため、電子機器の小型化・高密度化に貢献している。

キャパシタのデメリット

  1. 容量あたりのエネルギー密度が低い
    • 同じ体積や質量で比較した場合、バッテリーに比べて蓄えられるエネルギー量が圧倒的に少ない。
      そのため、長時間の電力供給源としては不向き。


  2. 漏れ電流(Leakage Current)の存在
    • 理想的なキャパシタは完全に絶縁されているが、実際のキャパシタでは誘電体の不完全性などにより
      わずかながら電流が流れてしまう。これを漏れ電流と呼び
      特に長時間の電荷保持が必要な用途や、低消費電力回路では問題となることがある
      電解コンデンサは比較的漏れ電流が大きい傾向にある。


  3. ESR(等価直列抵抗)とESL(等価直列インダクタンス):
    • 実際のキャパシタには、電極やリード線、誘電体などに起因するわずかな抵抗成分(ESR)と
      インダクタンス成分(ESL)が存在する。これらは特に高周波領域において
      キャパシタの理想的な特性を損ない、損失(発熱)や予期せぬ共振を引き起こす可能性があり。
      高速・高周波回路の設計では、これらの寄生要素を考慮する必要がある。


  4. 容量値の温度特性と経年劣化
    • キャパシタンスの値は、温度によって変動することがある。
      特に一部のセラミックコンデンサ(例えばX5R, Y5V特性など)は
      温度変化に対して容量値が大きく変動する傾向がある。
    • 電解コンデンサは、内部の電解液の乾燥などにより、使用に伴って容量が減少したり
      ESRが増加したりする経年劣化が避けられない。
      周囲温度や印加電圧などの使用条件によって寿命が大きく左右される。


  5. 充電・放電時間
    • キャパシタの充電・放電は瞬間的に行われるが
      回路全体の抵抗成分との組み合わせ(RC時定数)によって
      実際に電荷が蓄積されたり放出されたりするまでに時間がかかる。
      これにより、回路の応答速度が制限されることがある。
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