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高圧交流負荷開閉器(LBS: Load Break Switch)とは

高圧交流負荷開閉器、通称LBS(Load Break Switch)は、電気設備の高圧回路において
負荷電流の開閉を目的として設置される開閉器のこと。
主に変圧器や進相コンデンサーなどの高圧機器の一次側に設置される。
特に、変圧器容量が300kVA以下の受変電設備においては
主遮断装置として、電力ヒューズ(PF: Power Fuse)と組み合わせて使用されることが多く
この組み合わせを「PF・S形」と呼ぶ。
高圧交流負荷開閉器の役割と機能

LBSの主な役割と機能は以下の通り。
- 負荷電流の開閉
変圧器やコンデンサなどの高圧機器に流れる通常の負荷電流を
安全に投入・遮断する。 - 短絡電流・過電流の遮断(電力ヒューズとの組み合わせ
LBS単体では大電流の短絡電流を遮断する能力は限られるが、電力ヒューズ(PF)を併用することで
短絡電流や過電流を遮断し、回路を保護する。ヒューズが溶断することで回路が遮断される。 - 地絡電流の検知と遮断
地絡過電流継電器(GR)などと組み合わせて使用することで
地絡事故が発生した場合に、継電器からの信号を受けてLBSを開放し、波及事故を防ぐ。 - 励磁突入電流抑制機能
近年では、投入時に抵抗を挿入して励磁突入電流(変圧器投入時などに一時的に流れる大きな電流)を
抑制する機能を持つLBSもある。これにより、安全な開閉が可能になるだけでなく
保護協調対策としても有効となる。
高圧交流負荷開閉器の構造と仕組み

LBSは、主に以下の要素で構成されている。
- 主接点
普段電流が流れるメインの接点。 - 補助接点(アーク接点)
開閉時にアークが発生するのを防ぐための接点。
主接点よりも早く投入され、遅く開放されることで、アークの発生と消弧(アークを消すこと)を担い
主接点への負担を軽減する。
※補助接点がない製品もあるが、その場合は主接点に消弧室が付属している。 - 消弧室
開閉時に発生するアーク(非常に高温の放電)を冷却し、消弧するための構造。
アークが作業者に飛散するのを防ぎ、安全性を確保する。 - 電力ヒューズ(PF)
短絡電流や過電流を遮断するためにLBSと組み合わせて使用される。
ヒューズが溶断すると、ストライカと呼ばれる表示棒が飛び出し
それによってLBSを開放させる「ストライカ引き外し方式」が一般的。
これにより、3相のうち1相だけヒューズが溶断した場合でも、他の相も同時に開放され、欠相事故を防止する。 - 操作機構
手動でフック棒(ディスコン棒)を用いて操作するものや
継電器からの信号を受けて自動で開放する機構(トリップコイル)を持つものがある。
高圧交流負荷開閉器のヒューズリンク取替方法

ヒューズリンク動作時の取扱い(ヒューズ付負荷開閉器のみ)ストライカ引外し式は
ストライカヒューズの適用により、ヒューズリンクが動作した場合ストライカが飛び出し
開閉器が自動的に開路する。
また、ヒューズ付負荷開閉器はヒューズリンクが動作した場合表示棒が飛び出す。
※指示棒が飛び出さないものもある。
ヒューズリンクの取替は手順
(1)回路を死線状態にし、事故原因を調査し取り除く。
(2)ヒューズリンクを三相とも取り外す。
(ヒューズリンクが1本のみ動作した場合でも、劣化していることが考えられるので、必ず全相新品と交換が必要)
ヒューズは動作後に高温になっていることがあるので
電源を切った後でもやけどをしないように注意して取扱うこと。
(3)ヒューズリンク無しの状態でフック棒(遠方手動式は遠方手動)にて数回軽く入切操作を行い
次の項目をチェックする。
チェック項目
- 操作が異常に重くないこと。(容易に投入できること)
- 主コンタクトが確実に入ること。(下記図5参照)
- 補助ブレード(可動アーク接点)が確実に入ること。(下記図6参照)
- ラッチのかかりが十分なこと。
- アークシュート内面に著しく炭化物が付着していないこと。


引外し式の場合、ラッチが外れると自動トリップして危険なため
閉状態で点検は投入操作ハンドルを手で押さえて不用意にトリップしないように注意して行うこと。
参考資料
三菱屋内用高圧交流負荷開閉器 IB-91007-D 取扱説明書より画像引用

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