計器用変圧変流器(VCT)についての概略

高圧の需要家内の電力料金を測定する場合にVCTは使用される。
ただし、高圧受電では電圧が高いので電力量計で直接測定することができない。
そのために使用するのが計器用変圧変流器(VCT)となる。
VCTは鉄箱の中にVT(計器用変圧器)とCT(変流器)を内蔵したもので
下記図のような回路構成となっている。
VTでは高電圧を110V前後の低電圧に、CTでは定格電流として5Aの電流に変換して電力量計に出力する。

図:VCTの内部回路
新電気2019.06 現場の疑問解決塾 責任分界点ってなに? から画像引用
計器用変圧変流器(VCT)は、高電圧・大電流の電路において
電圧と電流を測定に適した低電圧・小電流に変換するための重要な機器。
主に電力会社との間の電気料金の算定(課金)や、保護継電器の動作に必要な信号の供給といった役割を担う。
VCTの目的と役割

高電圧・大電流の安全な測定
配電線路やキュービクル内の高電圧・大電流を直接測定することは危険であり、測定器も対応できない。
VCTはこれらを安全な電圧(一般的に110V)と電流(一般的に5Aまたは1A)に変換し、計器で測定可能にする。
電気料金の正確な算定
需要家(電気を使う側)が使用した電力量を正確に測定し
電力会社が電気料金を算定するために使用される。
特に高圧受電設備では、電力量計の前にVCTを設置することが義務付けられている。
VCTの設置について

VCTは電力会社の所有物なので電力会社が設置する。
ただし、需要家はその設置スペースを用意する必要がある。
キュービクルや電気室に設置する場合は主遮断装置の電源側に
1号柱に取付ける場合は、区分開閉器の電源側に設置するので必要なスペースを確保しなければならない。
下記図左にキュービクル設置のVCT、下記図右に1号柱設置のVCTの例を示す。


左:キュービクル設置のVCT 右:1号柱設置のVCT
※需要家の責任分界点以降(責任範囲内)にVCTがあっても
VCTの保安上の責任は電力会社にあるので故障しても需要家に責任はない。
また、VCTと電力量計は計量法の特定計量器に該当するので
検定の有効期限があり、定期的に有効期限内の計器に取り替える必要がある。
VCTの構造

VCTは、大きく分けて計器用変圧器部(VT部)と計器用変流器部(CT部)から構成される。
計器用変圧器(VT)部
- 一次巻線
高電圧側の電路に接続される巻線。
巻線数が多く、高い絶縁性能が必要。 - 二次巻線
計器(電力量計、電圧計など)に接続される巻線。
一般的な定格二次電圧は110Vまたは100V。 - 鉄心
一次巻線と二次巻線の磁束を結合する役割がある。
計器用変流器(CT)部
- 一次巻線
大電流が流れる電路に直列に接続される巻線。
通常は1ターン(電路がそのまま貫通する形)または数ターンの太い導体で構成される。 - 二次巻線
計器(電力量計、電流計など)に接続される巻線。
一般的な定格二次電流は5Aまたは1A。 - 鉄心
一次巻線と二次巻線の磁束を結合する。
VCTの種類

VCTは設置環境や電圧レベルによって様々な種類がある。
- 設置場所による分類
- 屋外用: 防雨・防じん構造で、屋外の電力引込点や変電所などに設置される。
- 屋内用: 屋内用キュービクル内や配電盤内に設置される。
- 絶縁方式による分類
- 油入式: 絶縁油を使用し、高い絶縁性能と冷却性能を持つ。
- モールド式(エポキシ樹脂モールド): 絶縁体をエポキシ樹脂などで固めたもので
不燃性、小型化、メンテナンスフリーの特長がある。現在はこちらが主流となっている。
- 電圧階級による分類
- 高圧(6.6kV級)、特別高圧(22kV級、66kV級など)に対応した様々な定格電圧のVCTがある。

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