PASは「Pole Air Switch」の略で
主に高圧で電気を受電する設備(自家用電気工作物)の引込点(責任分界点)に設置される
非常に重要な開閉器(スイッチ)のこと。
※日本語では「柱上気中負荷開閉器」と呼ばれる。
PASや最大の役割は、波及事故の防止と、設備の停電作業時の電源切り離し。
PASの役割(SOG動作機能)

PASの最も重要な機能は
需要家(電気を使用する側)の敷地内で短絡や地絡といった電気事故が発生した場合に
事故を電力会社の配電線に波及(拡大)させるのを防ぐこと。
この保護機能は、PASに内蔵または付加されているSOG動作機能(地絡・過電流保護機能)によって実現される。
地絡事故(G動作)の防止
機能
構内で地絡事故(漏電)が発生し
設定値以上の地絡電流が流れた場合
PASはこれを検知し、瞬時に開閉器を自動で開放(オフ)する。
効果
事故電流が外部に流れ出るのを防ぎ
地域一帯の広範囲な停電(波及事故)を未然に防止する。
短絡・過電流事故(SO動作)の防止
機能
構内で短絡事故や大過電流が発生した場合
PASは電流を検知し、開閉器が動作しないようにロックする。
その後、電力会社側の遮断器が一度動作して系統の電流を遮断し
無電圧になったことを検知してからPASが自動で開放(オフ)する。
効果
PAS自身は大きな短絡電流を遮断できないが
この手順により電力系統の信頼性を保ちつつ、事故点を切り離す。
開閉機能
役割
定期点検や事故復旧などで、需要家の高圧設備(キュービクルなど)を停電させる際
手動でPASを開放(オフ)し、電力会社からの電気を安全に切り離すころが可能。
→出迎え方式の場合のような送配電業者への開閉依頼や費用が発生しない。
地絡事故時の動作(G動作時)

1 線地絡電流 I1 の大きさは、特別な場合を除き、最大で 15 A である。
また、最大大口需要家でも 2000 kW であり、負荷電流 IL の最大値はおおよそ 200 A と考えられる。
したがって、1 線地絡時に PAS に流れる電流 I は、図 上記図に示すベクトル図からもわかるのとおり
最大でも 215 A 程度となる。
PAS の開閉能力が 300 A であり、この電流の大きさであれば、PAS を開放することは十分可能となる。
上記図に示すように、需要家構内 (F 点) で 1 線地絡事故が発生した場合
PAS に付属している地絡継電器 GR2 が、変電所の地絡継電器 GR1 より先に動作し、 PAS を開放する。
短絡事故時の動作(SO動作)

上記図において、短絡電流 Is は、変電所の近くでは 10000 A と大きい値であり
末端においても 3000 A は流れると考える必要がある。
短絡電流は最も小さい値でも PAS の開閉能力を大幅に超えているのでPAS でこの電流を開放することはできない。 PAS にこのような開閉能力以上の電流が流れると、ロックがかかり、開放しないようにされる。
SO動作の具体的な流れ

①短絡電流(大電流)が流れると、PAS に内蔵されている過電流ロックリレー(OC)が
動作してトリップロックをし、PAS が開放しないようになる。
②配電線に大電流が流れ続けてしまうので、変電所の過電流継電器(OCR)が動作し
引出用遮断器(VCB)がトリップする。
③配電線は停電するが、大電流はなくなる。
④大電流がなくなると、OC が復帰し、トリップロックが
解除される(配電線が停電(無電圧が確認)している条件で、PAS を開放するようになっている)
⑤VCB のトリップと同時に自動再閉路装置が起動し、約 1 分後に VCB を投入する。
配電線に接続されているほかの需要家も一瞬(約 1 分間)停電するが
再閉路に成功すれば波及事故扱いにはならない。
しかし、PAS が正常に動作せず、再閉路に失敗した場合は波及事故扱いになる。
参考資料
新電気 2025年8月号 現場で使える便利術 第4回 引き込み開閉器の動作責務より一部引用

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