架空線路の残留電圧とは
送電線や配電線などの架空線路が電源から切り離され(遮断器を開放され)た後も
電線路に残る電圧のこと。
この残留電圧は、主に線路の静電容量に蓄えられた残留電荷によって発生する。
架空線路の残留電圧発生原因(メカニズム)

架空線路の対地静電容量は相ごとにばらつきがある。
中相は小さくなり、両外側の相は大きくなる。
このため、対地電圧は正確にいうと不平衡になっている。
高圧配電線は非接地であるが各相のインピーダンスが平衡していると
配電線の中性点はゼロ電位になる。
しかし、多少不平衡になっているため中性点の電位はゼロにはならない。
これを中性点の残留電圧と呼び、通常は大きくても相電圧(3,810V基準)の1%程度といわれている。
詳細な説明
① 各相の電流A1は、対地電圧が不平衡となるため、指示値は多少異なる。
また、線路の対地電圧は系統の運用状態によって常に変動しているため、測定値もその都度多少変わる。
② 零相分の電流A2は、ケーブルの長さと残留電圧に比例して流れるが
線路の残留電圧は大きくても通常は1%程度なので電流A2の値は小さい。
線路には高調波が存在しているので、対地静電容量によるインピーダンスは
小さくなり高調波成分の漏れ電流は拡大されるので、電流A2は多くの高調波を含んだ波形となる。
漏れ電流値は小さいゆえに周囲の磁界の影響も受け、ケーブルの保守管理に役立つデータとしては適当ではない。
③ 引込ケーブルの電流A1を測定すれば次のような効用も期待できる。
なお、ケーブルの水トリーなどの劣化診断はuAの漏れ電流レベルにあり
クランプメータの精度や周囲磁界の影響を受けることなどを考慮すると劣化を予測することは困難と思われる。
架空線路における残留電圧が発生する要因

遮へい層の両端接地
非接地側の端末処理部のケーブル位置が何らかの原因で下がり
遮へい層リード線がブラケットなどに接触して接地することがある。
このとき、静電容量による漏れ電流は両端の接地リード線に分流するから電流A1が低下する。
ビニルシース層の絶縁不良
ビニルシース層に傷がつくと、水分が浸入して接地した状態となり電流A1が低下する。
ビニルシース層の絶縁を確認するには、絶縁抵抗を測定すればよい。
遮へい層のリード線を浮かして、500Vレンジで測定すれば通常100MΩ以上あるが
大きく低下するとビニルシース層の損傷による水分の浸入が疑われる。
残留電圧の主な影響と危険性

機器への影響(過電圧の発生)
遮断器の再投入時
線路に残留電荷がある状態で遮断器を再投入すると
線路の残留電圧に電源電圧が重畳されることになり、過電圧が発生する可能性がある。
遮断器、変圧器、避雷器、ケーブルなどの電力機器が損傷したり、寿命が短くなったりする危険性がある。
作業者への影響(感電の危険性)
停電作業を行う際、線路に残留電圧が残っていると
作業者が誤って触れた場合に感電する危険がある。
特に長距離の送電線では、残留エネルギーも大きくなるため
作業前の確実な残留電荷の放電(接地)が極めて重要となる。
参考資料
新電気 2019年9月号 実務理論 シリーズ 第1回
CVケーブル遮へい層の 接地方式とその取扱い片端接地方式 編 より一部引用

コメント