定格力率(ていかくりきりつ、Rated Power Factor)とは、交流(AC)電気機器が、設計上、最も効率よく動作するように想定された力率のこと。
無次元の数値で表され、通常は0から1の間の値、またはパーセント(%)で示される。
目次
定格力率の重要性

電気機器は、その定格力率で運転されることを前提に設計されている。
定格力率から大きく外れた状態で運転すると、以下のような問題が生じる可能性がある。
- 効率の低下: 力率が低いと、同じ有効電力を得るために大きな皮相電力が必要となり、電流が増加する。
これにより、配線や変圧器などでの電力損失が増え、エネルギー効率が悪化する。 - 電圧降下の増大: 電流が増加すると、配線などのインピーダンスによる電圧降下が大きくなる。
これにより、機器の端子電圧が低下し、本来の性能を発揮できなくなることがある。 - 発熱の増加: 電流の増加は、機器や配線の発熱を増加させ、絶縁劣化や寿命の低下につながる可能性がある。
- 電力系統への影響: 力率の低い機器が多く接続された電力系統では、系統全体の電圧安定性や供給能力に
悪影響を及ぼすことがある。
機器の種類と定格力率の例

- 誘導電動機(モーター): 一般的に、定格運転時に0.8〜0.9程度の遅れ力率(電流が電圧より位相が遅れる)を
持つように設計されている。 - 同期電動機: 力率を調整できる機能を持つものがあり、定格力率を1(またはそれに近い値)に設定できる場合が
ある。 - 変圧器: 負荷の種類によって変化するが、一般的に力率は負荷側の力率に大きく依存する。
変圧器自体は比較的高い力率で動作します。 - 照明器具(蛍光灯、LEDなど): 力率改善回路が組み込まれていない場合、低い力率を示すことがある
(特に旧式の安定器を用いた蛍光灯など)
最近の製品では、力率改善が進んでいる。 - 家電製品(エアコン、冷蔵庫など): インバータ制御などの技術により力率が改善されている製品が増えている。
- 電力用コンデンサ: ほぼ1に近い進み力率(電流が電圧より位相が進む)で動作し、系統の力率改善に用いられる。
定格力率の表示
多くの電気機器には、銘板などに定格電圧、定格電流、定格容量(皮相電力)、そして定格力率が記載されている。
機器を選定したり、設備の設計を行ったりする際には、この定格力率を確認し適切な対策を講じることが重要となる。
力率改善の方法

力率が低い機器を使用する場合や、電力系統全体の力率を改善する必要がある場合には、
力率改善コンデンサなどの設備を導入することがある。
これにより、無効電力を補償し、力率を向上させることができる。

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