地電圧(ちでんあつ)とは、
大地(地面)とある地点との間に存在する電位差のことを指す。
通常、大地は電気的に0V(基準電位)であるとされているが
実際には様々な要因によって大地に電位が生じることがあり
この電位差が地電圧として観測される。
地電圧の発生原因

電気機器の絶縁が劣化すると、本来電路内に留まるべき電流が大地に漏れ出すことがある(漏電)。
この漏洩電流が大地を流れることで、その経路上の大地に電位差が生じ、地電圧として現れる。
※最も一般的な地電圧の発生原因。
大地を流れる迷走電流(ストレイ電流)
地下鉄のレールや溶接機など、本来の電流経路とは異なる経路で大地を流れる電流を
「迷走電流」 or 「ストレイ電流」と呼ぶ。
これらの電流によっても大地に電位差が生じ、地電圧となる。
送配電線からの誘導

送電線や配電線など、高電圧の電線が近くにある場合
その電磁誘導作用によって周囲の大地に電位が誘起され、地電圧となることがある。
自然現象

落雷や地電流(地球内部で発生する自然な電流)など、自然現象によっても大地に電位差が生じることがある。
複数接地されている電路からの影響
複数の電気設備がそれぞれ接地されており、それらの接地極が大地中で電気的に接続されている場合
一方の設備で地絡(漏電)が発生すると、その影響が他の接地極にも及んで地電圧を生じさせることがある。
特に、近隣のインバータ機器などから大地に漏洩電流が多く流れ込むと、地電圧が発生しやすくなる。
地電圧が問題となる場面

地電圧は特に接地抵抗の測定時に問題となります。
接地抵抗計は、測定電流を大地に流し、それによって発生する電圧降下から接地抵抗を算出する仕組み。
しかし、大地に元々地電圧が存在すると、測定器が流す電流によって生じる電圧降下と、
地電圧が重なり合ってしまい、正確な接地抵抗値を測定することが難しくなる。
地電圧の影響と対策

地電圧の影響
- 測定誤差の増大
地電圧が高いと、接地抵抗の測定値が大きく変動したり、正確な値からかけ離れた値を示したりすることがある。測定器によっては、地電圧が一定の値(例えば3Vや10V)を超えると、測定不能となる場合もある。 - 測定の不安定化
地電圧が不安定に変動する場合、測定値も安定せず、信頼性の低い結果しか得ることができない。
地電圧の影響を避けるための対策

●地電圧の確認
接地抵抗を測定する前に、必ず地電圧を測定し、その値を確認する。
多くの接地抵抗計には地電圧測定機能が備わっている。

●地電圧の低減
地電圧が高い場合は、その原因となっている可能性のある機器の電源を切る
または電路から切り離すなどして、地電圧をできるだけ低い状態にしてから測定を行う。
●測定方法の工夫
- 周波数選択機能付き接地抵抗計の使用
地電圧は通常、商用周波数(50Hzまたは60Hz)に関連していることが多い。
このため、測定器が商用周波数とは異なる周波数(例えば45Hzや55Hz、65Hzなど)の電流を
流して測定することで、地電圧(ノイズ)成分を除去し、より正確な値を測定できるタイプがある。 - 大電流測定
地絡電流が大きい大規模な接地体の場合、20A以上の大電流を流して測定することで
地電圧の影響を相対的に小さくする方法もありますが、これは大掛かりな機材が必要となる。 - 補助接地極の配置
測定に用いる補助接地極の配置を工夫することで、地電圧の影響を低減できる場合もある。
地電圧の許容範囲

接地抵抗測定において、地電圧の許容範囲は使用する接地抵抗計によって異なりますが
一般的には3V以下が望ましいとされている。
10V程度までは測定可能な機器もあるが、その場合でも測定誤差が大きくなる可能性がある。

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HIOKI FT3151 アナログ接地抵抗計取扱説明書より一部引用

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