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高調波引き込み現象についての基礎知識まとめ

目次

高調波引き込み現象についての概略

高調波引き込み現象とは、電力系統において
進相コンデンサを投入した際に、系統にすでに存在する高調波と、進相コンデンサおよび直列リアクトル(進相コンデンサと共に設置されることが多い)の過渡的な電流が共振を起こし、結果として過大な高調波電流が継続して流れてしまう現象を指す。

通常、進相コンデンサには、基本周波数(日本では50Hzまたは60Hz)の電流以外に
高調波電流も流れているが、特定の条件下でこの高調波電流が異常に拡大し様々な障害を引き起こす可能性がある。

高調波引き込み現象のメカニズム

この現象のメカニズムは、主に以下の要素が関係している。

  1. 高調波の存在
    近年の電子機器(インバータ、UPSなど)の普及により
    電力系統には多くの高調波が発生し、電圧や電流の波形が歪んでいる。

  2. 進相コンデンサの特性
    進相コンデンサは、周波数が高くなるほどインピーダンスが低くなる特性を持っている。
    そのため、高調波電流が流れやすい性質がある。

  3. 直列リアクトルの磁気飽和
    進相コンデンサの突入電流抑制や高調波抑制のために直列リアクトルが設置されることがあるが
    この直列リアクトルは、過大な電流が流れると磁気飽和を起こし
    インダクタンス(リアクタンス)が低下する。インダクタンスが低下すると、回路の共振周波数が変化する。

  4. 共振現象
    進相コンデンサを投入する際、過渡的に大きな電流が流れる。
    この過渡電流と、電力系統に存在する高調波が
    進相コンデンサと直列リアクトルで構成される回路の共振周波数に近づくと、共振現象が発生する。
    特に、直列リアクトルが磁気飽和を起こしてリアクタンスが低下すると
    回路の合成インピーダンスが特定の高調波周波数においてゼロに近くなり
    その高調波電流が非常に大きくなってしまうことがある。

高調波引き込み現象の影響

高調波引き込み現象が発生すると、以下のような深刻な影響が生じる可能性がある。

  • 直列リアクトルや進相コンデンサの異常過熱・焼損
    過大な高調波電流が流れ続けることで、機器が許容以上の熱を発生し、最悪の場合、焼損に至る。

  • 保護ヒューズの不要溶断
    過電流により、本来溶断する必要のないヒューズが溶断し、設備が停止するなどのトラブルが発生する。

  • 異音・振動
    機器から異常な音や振動が発生することがある。

  • 力率改善機能の低下
    進相コンデンサが正常に機能しなくなり、力率改善という本来の目的が果たせなくなる。

  • 電力系統全体への影響
    発生した高調波電流が電力系統に拡大し、他の設備にも悪影響を及ぼす可能性がある。

高調波引き込み現象の対策

  • 高調波耐量の高い設備の導入
    JIS改正により、高調波引き込み現象に対応できる高調波耐量タイプの直列リアクトルが追加されている。
    これらを採用することで、障害を防止できる。

  • 高調波引き込み現象防止機能付き開閉器(ハーモニックスセーバなど)の設置
    これは、進相コンデンサ投入時の過渡電流を一時的に抵抗で抑制し
    リアクトルの磁気飽和を防ぐことで、高調波電流の共振拡大を防止するもの。
    投入後に抵抗を短絡することで、定常状態に移行する。

  • 電力系統の高調波レベルが低い時間帯に投入する
    運用面での対策として、高調波発生源が少ない時間帯に進相コンデンサを投入すること
    引き込み現象のリスクを低減できる。

  • 過電流及び状態監視による保護遮断
    直列リアクトルや進相コンデンサに温度センサーや圧力センサーなどを設置し
    異常を検出した際に自動的に回路を遮断する保護システムを導入する。

  • 既存設備の更新
    特に古いJIS規格で製造された進相コンデンサは高調波耐量が低い場合があるため
    最新の設備への更新も有効な対策となる。
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