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鉛蓄電池における触媒栓式と制御栓式の違いまとめ

目次

蓄電池についての概略

蓄電池(Storage Battery、または二次電池)とは
電気エネルギーを化学エネルギーとして貯蔵し、必要に応じて再び電気エネルギーとして
取り出すことができる装置のこと。
一度放電しても、充電することで繰り返し使用できるのが特徴。

蓄電池の種類と特徴

鉛蓄電池は大きく分けて以下の2種類がある。

開放型(液式電池、ベント形)

  • 電解液(希硫酸)が液体の状態で満たされており、電解液量を確認・補充するための補水口がある。
  • 充電中に発生するガスを外部に放出するため、定期的な補水や換気が必要。
  • 構造が単純で安価だが、液漏れのリスクやメンテナンスの手間がある。
  • 主な用途:自動車のバッテリー、フォークリフト、非常用電源など。

密閉型(制御弁式、シール形、VRLA: Valve Regulated Lead-Acid)

  • 電解液をガラス繊維マットに染み込ませたり、ゲル状に固めたりすることで密閉されている。
  • 発生したガスを内部で水に戻す「酸素再結合」という仕組みにより
    原則として補水が不要で「メンテナンスフリー」と呼ばれる。
  • 液漏れのリスクが低く、横置きも可能ですが、過充電時のガス抜き用の安全弁は備えられています。
  • 主な用途:無停電電源装置(UPS)、電動車いす、太陽光発電システムなど。

触媒栓式と制御栓式の違い

触媒栓式

上記図の触媒栓を蓄電池に取り付けたもの。
蓄電池から発生した水素、酸素ガスを、触媒栓の働きによって
再結合させて水にもどし、電解液に還流する。

触媒栓は、長時間使用すると触媒性能が劣化するので、3~5年目安の取り換えが推奨される。

制御弁式

正極板から発生する酸素ガスは、負極板と反応して消失(吸収)する。
また、負極板は常に満充電状態にならないので水素ガスの発生は抑えられる。
したがって、寿命まで補水を必要としない

また、「均等充電」「電解液比重測定」「補液」とも不要なのでメンテナンスフリーとなる。
制御弁式は「陰極吸収式」とも、電解液の量が少ないことから「ドライバッテリー」とも呼ばれている。

通常は、制御弁によって密閉構造であるため外気は侵入できない。
しかし、蓄電池の内圧が上昇した場合は、制御弁が作動して電槽の破裂を防止する。

制御弁式メリットまとめ

  • 設置コストが安い
  • メンテナンスフリー(補水、均等充電不要、比重測定が不要)
  • 設置スペースの制約が図れる
  • 安全

制御弁式は均等充電が不要の理由は?

ベント形および触媒栓式ベント形据え置き鉛蓄電池は
極板の格子に鉛-アンチモン系合金を使用しているため
使用中に正極板の格子が徐々に腐食され、それとともに合金中のアンチモンが負極板に析出する。

負極板に析出したアンチモンは、負極板の自己放電を増加させるため
蓄電池個々に自己放電のばらつきを生じてしまう。
そのため、充電状態の均一化を図るために、定期的に均等充電を実施する必要がある。

これに対して制御弁式は、極板の格子に鉛-カルシウム系合金を採用しており
アンチモンを含んでいない。そのため、負極板にアンチモンが析出することはなく
自己放電が少ないので、蓄電池個々にばらつきは生じず、均等充電は不要になる。

参考資料

新電気2019年 4月号 理論と実務を結ぶ電気のQ&A 蓄電池 その1 より画像引用

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