基本的な考え方

地絡電流だけで配電線と需要家設備の動作協調をとるのは難しいので
地絡継電器の動作電流値は構内故障を確実に検出できる値とすればよく
保護協調は時限でとればよい。
また、需要家の受電キュービクルと第2キュービクルについては
動作時限あるいは動作電流で協調をとればよい。

図:保護協調の例
配電用変電所の配電線の整定

配電用変電所の配電線の地絡保護は
地絡過電圧継電器と地絡方向継電器とタイマの組み合わせで行っており
送配電事業者が定めた地絡抵抗値を検出できる零相電圧や零相電流を整定している。
具体例
零相電圧20[V]一次換算400[V]~20[V]×√3/6600(190/√3)3相零相電流2mA(一次換算267[mA])~2[mA]×200/1.5)、動作時間は仕上がりで0.9秒等としている。
なお、動作時については
電気設備の技術基準の解釈第17条のB種接地抵抗管理値に基づく許容時間以内とし
最後に逆周する必要があるので、1秒以内としている。
GRの整定

GRの動作電流は、構内故障を確実に検出できるよう200mAとすることが一般的である。
また、動作時間は配電用変電所の継電器と協調をとり0.2秒とするのが一般的である。
GRは零相電流だけで動作するので
配電線路等に需要家の構内ケーブルの対地静電容量による電流が
構外に流出し、不動作をすることかある。
具体例
ケーブルの対地静電容量は38mm^2の場合0.96µF/kmなので
地絡時の流出電流は抵抗分を無視すると、60Hzの場合、1km当たりの地絡電流Ig60[A/km]は、

I0=健全時の対地電圧×ωC =36600×2×π×60×0.96×10−6 =1.378[A/km]
となるので、200mAを超えるケーブル長1[km]は、
0.2[A]÷1.378[A/km]=0.145[km]
となり、CVT38mm^2の構内ケーブルが145m以上の場合不整動作する
(高圧電線等の影響やマージンも考慮すると、さらに短くなる)
このような場合は送配電事業者と協議してGRの動作電流を400mAとするか
方向性地絡継電器を使用する。
DGRの整定

DGRの動作電流と動作時間については、GRと同様の考え方で整定する。
零相電圧については、各相の不平衡による残留電圧により
誤動作しないよう5%(一次換算値190[V]=3.810[V]×5[%])とするのが一般的であるが
残留電圧が大きい場合はタップを上げる。
動作位相の最大感度角(動作位相の中央値)は
地絡電流が対地静電容量による電流のみであれば進み90°となるが
配電線の抵抗分を加味して進み45°固定としているものが多い。
また、切り替え可能なものは、メーカーの指定どおり非接地系の場合は進み60°
消弧リアクトル接地系の場合は進み30°とする。

参考資料
新電気 2020年12月号 地絡保護協調より引用



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