接地形計器用変圧器(EVT)についての概略

EVTは、主に高圧・特別高圧受電設備において
地絡事故時の零相電圧を検出するために用いられる特殊な計器用変圧器。
接地形というように一次端子の一端を接地して使用している。
EVTは(Earthed Voltage Transformer)の略で、日本語では「接地形計器用変圧器」という。
以前はGPT(Grounding Potential Transformer)という文字記号が使用されていた
EVTとGPTは同じもの。
下記外部結線図からわかるように、一次巻線と二次巻線はY接続で、三次巻線はΔ接続とし
一端を開放して、そこに電流制限抵抗(CLR)を挿入する。
一次巻線は高圧側に接続して、その中性点はA種接地とする。
また、二次巻線は通常の計器用変圧器として使用する。

接地形計器用変圧器(EVT)の目的と役割

EVTを設置する目的は、地絡事故時に発生する零相電圧を検出すること。
高圧配電線の地絡事故時には、EVTの三次巻線に電圧が発生するので
これにより保護装置を動作させる。発生する零相は、受電相電圧が最大となり
地絡点の抵抗が大きくなるほど小さくなり、健全時には電圧が発生しない。
(ただし、配電線の線路定数のアンバランスや不平衡負荷などがあると残留電圧が発生するがこの値は一般に小さい)。
また、高圧配電線はほとんどが中性点非接地方式を採用しており
完全に非接地であると1線地絡時に異常電圧が発生する場合があるので
これを防止する役割もある。
接地形計器用変圧器(EVT)の役割:詳細Ver
- 零相電圧の検出
- 健全な状態(地絡事故がない状態)では、三相の電圧は平衡しており、零相電圧はほぼゼロ。
しかし、電路が大地に接触する「地絡事故」が発生すると、三相の電圧平衡が崩れ、零相電圧が発生する。
EVTは、この零相電圧を検出し、二次側に低い電圧として出力する。
- 健全な状態(地絡事故がない状態)では、三相の電圧は平衡しており、零相電圧はほぼゼロ。
- 地絡保護継電器への入力
- システム保護と安全確保
- 地絡事故を早期に検出して遮断することで、事故の拡大(火災、機器損傷など)を防ぎ
人身事故のリスクを低減する。
また、系統全体の安定性を保ち、広範囲な停電を防ぐ役割も果たす。
- 地絡事故を早期に検出して遮断することで、事故の拡大(火災、機器損傷など)を防ぎ
EVTとZCT(零相変流器)の違い

- EVT: 零相電圧を検出する。地絡方向継電器と組み合わせて、地絡点の方向を特定することも可能。
主に高圧・特別高圧の非接地系統や抵抗接地系統で地絡検出に用いられる。 - ZCT: 零相電流を検出する。電路を貫通させて設置し、地絡時に流れる零相電流を検出する。
主に高圧・特別高圧の直接接地系統や低圧・高圧の非接地・抵抗接地系統で地絡検出に用いられる。
両者は検出する物理量が異なるため、システムの接地方式や必要な保護レベルに応じて使い分けられたり
併用されたりする。
接地形計器用変圧器(EVT)が高圧受電設備に設置されていない理由
接地形計器用変圧器(EVT)の主な設置場所

- 受変電設備
電力会社からの引き込み口(高圧・特別高圧側)や
自家用発電設備(太陽光発電、コージェネレーションなど)の系統連系点などに設置される。 - 太陽光発電システムにおけるEVT
特に、特別高圧で電力系統に連系するメガソーラーなどでは
地絡保護のためにEVTの設置が必須となる場合がある。
これは、既存の電力系統保護と協調させるため、または発電設備自体の地絡保護を強化するため。
EVTが高圧受電設備に設置されていない理由
EVTは配電用変電所と特別高圧受電設備に使用され
一般の高圧受電設備では使用できない。
高圧受電設備にEVTを設置すると
・配電系統の中性点が多重接地になって保護継電方式に影響すること
・地絡時に故障点の探索のために行う絶縁抵抗測定が困難になること
のため。
このため、一般の配電線から受電する高圧受電設備で
零相電圧が必要な場合にはZPDを使用する。
ZPDはコンデンサを使用しているので
非接地(中性点を接地しない)で零相電圧を検出できるため。

参考資料
新電気2019年 4月号 現場の疑問解決塾第4回「EVT・ZVTって何してるの」より一部引用

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