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短絡容量とは

短絡容量(たんらくようりょう、Short-Circuit Capacity; SCC)とは
電力系統のある地点で三相短絡事故(電気回路の3線が短絡すること)が発生した際に
その事故点に流れ込みうる短絡電流の大きさを、電圧と電流の積である電力の単位(MVAやkA)で表したもの。
これは、その地点から電源側を見た電力系統の強さを示す指標とも言える。
短絡容量が大きいほど、事故発生時に大電流が流れ込む可能性が高いことを意味する。
計算式
短絡容量 (MVA) = 3 × 線間電圧 (kV) × 短絡電流 (kA)
あるいは、パーセントインピーダンス(基準容量に対する系統インピーダンスの割合)を用いて、基準容量と基準インピーダンスにおける短絡容量から求める方法もある。
短絡容量 (MVA) = 基準容量 (MVA) × パーセントインピーダンス(%Z)100
短絡容量が重要である理由

短絡容量を把握することは、電力系統の設計、機器の選定、および保護協調において非常に重要である。
- 遮断器などの開閉機器の選定: 短絡事故発生時には非常に大きな電流が流れるため、
事故点を切り離す役割を持つ遮断器や開閉器は、
その短絡電流を安全に遮断できる能力(定格遮断容量)を持っている
必要がある。短絡容量を知ることで、必要な遮断容量を持つ機器を選定できる。 - 機器の損傷防止: 短絡電流による熱的、機械的なストレスから
ケーブル、母線、変圧器などの機器を保護するためにも
想定される短絡電流の大きさを把握しておく必要がある。 - 保護協調: 事故点を迅速かつ確実に系統から切り離すためには
リレーなどの保護装置が適切に動作する必要がある。
短絡容量は、これらの保護装置の動作設定を行う上で重要な情報となる。 - 電圧安定性: 短絡容量はその地点の電圧維持能力を示す側面もあり
短絡容量が小さい地点では、事故や負荷変動による電圧変動が大きくなりやすい傾向がある。
短絡容量に影響を与える要因

短絡容量は、電力系統の構成や運用状態によって変動する。
- 電源容量: 系統に接続されている発電機や上位系統からの供給電力容量が大きいほど、短絡容量は大きくなる。
- 系統インピーダンス: 事故点から電源側を見た電力系統のインピーダンス(抵抗やリアクタンス)が小さいほど
短絡電流は大きくなり、結果として短絡容量も大きくなる。
送電線や変圧器のインピーダンス、系統のループの多さなどが影響する。 - 系統構成: 系統が複雑に 連携しているほど、事故時に各方面から電流が流れ込むため
短絡容量は大きくなる傾向がある。 - 運用状態: 系統に接続されている発電機の台数や、送電線の運用ルートなどによっても短絡容量は変動する。
短絡容量に関わるリスクと対策

短絡容量が過大になると、それに耐えうる機器の選定が難しくなったり
コストが増大したりする問題が生じる。
また、事故発生時の機器への影響も大きくなる。
そのため、短絡容量を抑制するための対策が講じられることがある。
- 系統分割: 電力系統をいくつかのブロックに分割し、通常時に連系しないようにすることで
事故時の短絡電流の集中を防ぐ。 - 限流リアクトルの設置: 短絡電流を抑制するために、意図的にインピーダンスを増加させる
限流リアクトルを設置することがある。 - 高インピーダンス機器の採用: 変圧器などで、通常よりもインピーダンスの高い機器を
採用することも短絡容量抑制につながる。 - 上位電圧の導入: 電圧階級を上げることで、同じ送電容量であれば電流が小さくなるため
相対的に短絡容量を抑制する効果がある。

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