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テスターについての基礎知識まとめ

テスター(またはデジタルマルチメーター、マルチテスター)は
電気回路の基本的な物理量である電圧、電流、抵抗などを測定するための非常に汎用性の高い電気測定器

目次

テスターで測定できる主な項目

テスターは、単一の測定項目だけでなく
複数の項目を測定できるため「マルチ」メーターと呼ばれる。

  1. 電圧 (V)
    • 直流電圧 (DCV): 乾電池、バッテリー、USB電源、太陽光パネルなど、方向が一定の電圧を測定する。
    • 交流電圧 (ACV): 家庭用コンセント、商用電源など、時間とともに大きさと方向が変化する電圧を測定する。
  2. 電流 (A)
    • 直流電流 (DCA): 直流回路を流れる電流を測定する。
      回路を切断してテスターを直列に接続する必要がある。
      ※基本的にテスターは使用しない。
    • 交流電流 (ACA): 交流回路を流れる電流を測定する。
      ※こちらも直列接続が基本となるが、クランプメーター機能を持つテスターであれば
       回路を切断せずに測定できる。
  3. 抵抗 (Ω)
    • 電気の流れにくさを示す抵抗値を測定する。
      断線の有無や、抵抗器の抵抗値の確認などに使う。
  4. 導通 ( continuity )
    • 回路が電気的につながっているか(断線していないか)をブザー音や表示で確認する。
  5. ダイオードテスト
    • ダイオードの順方向電圧降下を測定し
      正常に機能しているか(一方向にだけ電流が流れるか)を確認する。
      LEDの点灯確認などにも使える。
  6. 静電容量 (F)
  7. 周波数 (Hz)
    • 交流信号の周波数を測定する。
  8. 温度 (テスターによる)
    • 専用のプローブを使用することで温度測定が可能なモデルもある。

主なテスターの種類

大きく分けて以下の2種類がある。

アナログテスター(アナログマルチメーター)

↑アナログテスタ内部回路図例

  • 特徴
    測定値を針と目盛りの組み合わせで表示する。
  • メリット
    • 数値の変動や傾向を視覚的に捉えやすい(例えば、電圧が徐々に上昇している様子など)。
    • 比較的安価なものが多い。
  • デメリット
    • 目盛りを読み取る際に個人差が出やすい。
    • 測定レンジの切り替えやゼロ点調整が必要な場合がある。
    • 内部抵抗がデジタルテスターより低いため
      測定回路に影響を与えやすい場合がある(特に高インピーダンス回路)。
  • 用途: 大まかな値の把握、変動の確認など。

上記図にアナログテスタの内部回路の例を示す。

アナログテスタの指示計は可動コイル形の直流電流計。
この電流計に直流電圧、直流電流、交流電圧、抵抗値を表示させるが
電圧、抵抗などはそのまま直流電流計に接続することは出来ない。
このため、電圧と抵抗測定時には内部で直流電流に変換して表示している。
可動コイルは細い銅線を数百回も巻いたものなので
一般に200〜2,000Ω程度の抵抗がある。

また、測定レンジの拡大のために可動コイルと直列に抵抗(倍率器)が挿入される。
これらの抵抗がテスタの内部抵抗になる。

電圧を測定する場合にはテスタの内部抵抗が実際の測定回路と並列に接続されるので、
内部抵抗が小さいと測定回路に与える影響が大きくなり、誤差も大きくなります。
このため、内部抵抗は大きいほどよいことになる。

なお、交流は周期的に電流の方向が反転するので
可動コイル形の直流電流計では両方向の振れが打ち消し合って、ほとんど動作しない。
このため、交流の場合は整流器で直流に変換してから測定する。

デジタルテスター(デジタルマルチメーター、DMM)

↑デジタルテスター内部回路図例

特徴: 測定値を液晶ディスプレイに数値で表示する。

メリット

  • 値を直接数値で読み取れるため、測定誤差が少ない
  • オートレンジ機能により、測定レンジの切り替えの手間が省けるものが多い。
  • 多機能なモデルが多く、幅広い測定項目に対応できる。
  • 内部抵抗が高く、測定回路への影響が小さい。

デメリット

  • 数値の変動を視覚的に捉えにくい場合がある(ただし、グラフ表示機能付きのDMMもある)。
  • アナログテスターより高価な傾向がある。
  • 用途: 精密な数値の測定、多機能な測定が必要な場合。

上記図にデジタルテスタの内部回路の例を示す。

デジタルテスタは、すべての測定項目をデジタル値に変換して
液晶表示器などの表示部に表示させる。

直流電圧は直流A/D変換器に入力するが、交流電圧は交流を整流器で直流に変換してからA/D変換器に入力する
この整流方式には、平均値整流方式実効値整流方式の2種類がある。

平均値整流方式は、回路がシンプルで低コストなので、小型のテスタで多く使われている。
ただし、測定電圧の波形が歪んでいると誤差が大きくなる
一方、実効値整流方式はインバータ機器やスイッチング電源などの
波形が歪んでいるものでも正確に測定できるので、高精度のテスタで使われている。

なお、実効値整流方式といっても、どんな波形にも対応できるわけではない。
クレストファクタ(波高率)が大きいと、測定は不可能になる。

テスターの測定原理 (基本的な考え方)

  • 直流電流計
    電流が流れると発生する磁力によってコイルが動き
    針を振らせる(アナログ)か、その電流値をデジタル変換して表示する。

  • 電圧測定
    抵抗値の非常に大きい抵抗(倍率器)を電流計に直列に接続し
    オームの法則 (V=I×R) を利用して、流れるごくわずかな電流から電圧を逆算して表示する。
    この際、測定対象に並列に接続する。

  • 電流測定
    電流計に並列に抵抗(分流器)を接続し、電流の一部を分流させて
    測定可能な範囲の電流を計器に流し、全体の電流値を表示する。測定対象に直列に接続する。

  • 抵抗測定
    テスター内部の電池から電流を流し、オームの法則 (R=V/I) を利用して
    測定対象の抵抗にかかる電圧または流れる電流から抵抗値を算出する。

テスターの正しい使い方と注意点

安全かつ正確に測定するために、以下の点に注意が必要となる。

  1. 測定モードの選択
    測定したい項目(DCV, ACV, DCA, ACA, Ωなど)に合わせて、ダイヤルスイッチを正確に設定する

  2. 測定レンジの選択
    測定する値が不明な場合は、まず最も高いレンジに設定し
    徐々に適切なレンジに下げていく

    ※デジタルテスターのオートレンジ機能があればこの手間は省ける。

  3. テストリードの接続
    • 電圧測定
      測定したい回路に並列に接続する
      直流の場合、赤リードをプラス側、黒リードをマイナス側に接続する。
      交流の場合は極性はない。

    • 電流測定
      測定したい回路を切断し、テスターを直列に接続する。
      電流測定モードで電圧をかけてしまうと
      テスター内部のヒューズが飛んだり、故障の原因になる。

    • 抵抗・導通測定
      測定対象の電源を必ず切ってから行う。
      通電状態の回路に抵抗測定モードで接続すると、テスターが故障する。

  4. 安全の確保
    • 濡れた手で操作しない。
    • テスター本体やテストリードに損傷がないか確認する。
    • 最大定格電圧や最大定格電流を超えた測定は絶対に行わない。
    • 感電の危険がある場所での作業は、必ず絶縁手袋を着用するなど適切な保護具を使用する。
    • テストリードを持つ際は、指が金属部分に触れないように、つば(ガード)より後ろを持つ。
    • 測定が終わったら、テストリードを外してからモードをOFFにするか
      電圧測定モードに戻しておくのが一般的
      ※電流モードのまま放置すると、次に電圧を測ろうとした際に短絡させてしまう危険があるため

電圧測定と電流測定の違いによる事故防止

電圧測定

電圧測定は測定箇所に対して並列に接続する。
電圧計の内部抵抗は大きくなくてはならない。

内部抵抗が大きい理由

ブレーカの電圧を測定時、もし電圧計の内部抵抗が小さく、0 Ω に近ければ
ブレーカを短絡することになるため。

電流測定

測定箇所に対して直列に接続するので
内部抵抗は小さいことが理想となる。

想定される事故

デジタルマルチメータには、電圧計と電流計が小さなボディの中に入っており
ロータリースイッチを回すことで、それらの機能を切り替える。
内部抵抗の大きさに着眼して考えると、危険な現場状況が起こる可能性がある。
もし間違って、ロータリースイッチで電流計を選択しているときに
ブレーカの電圧を測定してしまった場合
、電流計の内部抵抗は 0Ω に近いため
コンセントを短絡することになり、事故が発生する。

参考資料

新電気 2024年9月号「現場の疑問解決塾 電圧測定」より 画像引用

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