単位法[p.u]値についての結論(忙しい人向け)

基準値を決めて、その何倍かを表す数値のこと。
(単位法=基準値の何倍かを表した値)
単位法の具体例
基準値の5倍→5[p.u]
基準値の0.3倍→0.3[p.u]
単位法(Per Unit System, p.u.)についての考え方

単位法とは、電力系統の各電気量(電圧、電流、電力、インピーダンスなど)を
それぞれあらかじめ設定した基準値に対する比率で表現する方法のこと。
=実際の物理量そのものではなく、基準値を1.0として、それに対する相対値で表す。
単位法を使う必要性について

変圧器の巻数比の影響を除去できる
電力系統では様々な電圧レベルが混在しており、変圧器がそれらの間を結んでいる。
単位法を用いると、変圧器の巻数比が自動的に計算に考慮されるため
異なる電圧レベルの回路要素をあたかも同じ電圧レベルに統一したかのように扱え計算が非常に簡素化される。
実際の非常に大きな数値や小さな数値を扱う代わりに、1.0前後の比較的小さな数値で計算を行うため
計算間違いが減り、直感的に値の大小を把握しやすくなる。
機器の定格値との比較が容易:
機器の性能や限界が定格値に対する比率で表現されていることが多いため
単位法を用いることで、過負荷や不足電圧といった状態を容易に判断できる。
異なる定格を持つ機器の比較が容易
容量の異なる発電機や変圧器であっても、単位法で表せば同じ基準で比較検討できる。
インピーダンスの典型値の把握
機器の種類(発電機、変圧器、送電線など)ごとに
単位法インピーダンスの値がある程度の範囲に収まる傾向があるため
設計や解析の際に目安として利用しやすい。
単位法の変換方法について

単位法を用いるには、まず2つの基準値を設定する必要がある。
- 基準電力(Base Power, Sbase または Pbase)
通常は有効電力、または皮相電力で表され、MVA(メガボルトアンペア)や MW(メガワット)で設定される。
→系統全体の基準となる総容量のようなもの。 - 基準電圧(Base Voltage, Vbase)
kV(キロボルト)で設定される。
これはその回路区間の公称電圧。
この2つの基準値が決まると、他の基準値が自動的に計算できる。

そして、任意の電気量 X の単位法値 Xp.u. は、実際の値 Xactual を基準値 Xbase で割ることで求められる。

変圧器と基準値の変換
変圧器を挟んで電圧レベルが変わる場合
それぞれの電圧レベルで適切な基準電圧を設定する。
例)変圧器の1次側と2次側でそれぞれ基準電圧 Vbase1 と Vbase2 を設定するとする。
このとき、これらの基準電圧の比率は、変圧器の巻数比と一致させるように設定するのが一般的となる。

この設定により、変圧器のインピーダンスを単位法で表現すると
1次側から見た単位法インピーダンスと2次側から見た単位法インピーダンスが同じ値になる。
これにより、変圧器をあたかも理想変圧器のように扱え、回路計算が非常に単純になる。
単位法の具体的な計算例

単相回路で以下のような値の場合

単位法の適用範囲

単位法は、電力系統のあらゆる解析に適用される
- 潮流計算(Power Flow Analysis)
各母線における電圧、有効電力、無効電力の分布を計算する。 - 短絡電流計算(Short Circuit Current Calculation)
系統に事故(短絡)が発生した際の事故電流を計算し、遮断器の選定などに用いる。 - 安定度計算(Stability Analysis)
系統が外乱(事故など)に対して安定に運転を継続できるかを評価する。 - 継電器協調(Relay Coordination)
保護継電器の動作設定値を決定する。
単位法の注意点

- 基準値の選択
基準値は解析対象となる系統の規模や特性に応じて適切に選択する必要がある。
通常は、系統全体の定格電力や主要な電圧レベルを基準とする。 - 一貫性
一度設定した基準値は、その解析全体を通して一貫して使用する必要がある。
特に変圧器を挟む場合は、基準電圧の変換に注意が必要となる。 - 三相回路での扱い
三相回路の場合、通常、基準電圧は線間電圧、基準電力は三相電力で設定される。
インピーダンスの計算式には 3 が含まれないことに注意が必要

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