保護方式

地絡故障の保護方式としては、需要家の責任分界点に設置される
地絡継電器を備えた高圧区分開閉器で構内ケーブル以降の高圧設備を
一括して保護する方式が一般的に採用されている
※出迎えケーブルなどで、地絡継電器を使用して主遮断器を動作させる方式もある。
地絡電流は負荷電流以下であるため、遮断容量の問題は生じない。
高圧区分開閉器(PAS)

高圧区分開閉器(以下、PASという)には
主に開放形の高圧気中遮断器(以下、AOGという)と
密閉形の過電流ロック形高圧気中開閉器(以下、SOGという)がある
※AOGは限流ヒューズを内蔵しているため短絡遮断もできるが
充電部が露出しているため塩害地には不適である。
SOGは密閉型のため耐候性があり、短絡遮断機能はないものの短絡故障による
配電線停電後に開放ロックし再加圧を防止する機能を有している
(蓄勢トリップという)
また、避雷器や地絡継電器の電源を内蔵したものもある。
高圧受電用地絡継電装置

高圧受電用地絡継電装置(以下、GRという)は
地絡故障時の零相電流で動作する無方向性の地絡継電器で
JIS C 4601 (1993) で規定されている。
見本は地絡過電流継電器(OCGR)と呼ばれるべきであるが
一般的にGR or HGRと呼ばれている。
GRの位相特性は下記図のとおりで
零相電流の方向に係なく零相電流が整定値を超えた場合に動作する。

GRの位相特性GRの動作電流の整定は少なくとも
200mA、400mA、600mAの3点
動作時間 は130%時0.1〜0.3秒、400%時0.1〜0.2秒と
されているがPASに付属するもの は固定のものが多い。

高圧受電用地絡方向継電装置

高圧受電用地絡方向継電装置(以下、DGRという)は
地絡故障時の零相電流とその方向により動作するもので
地絡方向継電器と呼ばれJIS C 4609 (1990)で規定されている。
DGRの位相特性は下記図のとおりで、零相電圧を基準とし
零相電流が需要家へ流入する方向、かつ整定値を超えた場合に動作する。

DGRの動作電流の整定は
少なくとも200mA、400mA、600mAの3点
零相電圧の整定は固定式または可変式
動作位相は製造業者が明示する位相
動作時間は130%時0.1~0.3秒、400%時0.1~0.2秒とされているが
PASに付属するものは最大感度角が45°固定または30°、60°の切り替え
動作時間が0.1~0.5秒の切り替えとなっていることが多い。

零相変流器

零相変流器(以下、ZCTという)は
地絡故障時の零相電流を検出し継電器の動作に通した電流に変換するもの。
零相電流は、三相分の変流器をスター結線して残留回路で検出(I0=Ia+Ib+Ic)することもできるが
非接地の場合は電流値が小さいため、主に零相変流器が使用される。
零相電流の検出原理は下記図のとおり、地絡等があれば行きと帰りに差が生ずるので
その差分を零相電流として検出している。

図4 零相電流の検出原理
ZCTの変流比は200mA/1.5mAのものが多く
PASに内蔵されていることが多い。

零相計器用変圧器(ZPD)

零相計器用変圧器は、地絡故障時の零相電圧を検出するもので
系統の短絡検出のほか、DGRの零相電流の位相判定用の基準入力として使用されている。
零相計器用変圧器には接地計器用変圧器(以下、EVTという)と
コンデンサ形計器用変圧器(零相電圧検出装置または零相基準入力装置ともいう、以下、ZPDという)がある。
EVTは下記図のとおり二次側のオープンデルタ結線で零相電圧を検出(3V0=V˙a+V˙b+V˙c)するもので
その出力には制限抵抗が接続されているため高抵抗接地と同等となり
配電用変電所以外で使用すると2点接地となるため需要家設備では使用されない。

ZPDは下記図のとおりコンデンサを各相と対地間に設置して各相の対地電圧を合成し
分圧により零相電圧を検出するもので、ZCTと同様にPASに内蔵されていることが一般的である。
ZPDはメーカーごとにに出力特性に違いがあり、同一メーカーのDGRと組み合わせるよう指定されていることが多い。


参考資料
新電気 2020年12月号 地絡保護協調より引用
㈱オムロン 保護継電器 技術解説より画像引用


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