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高圧ケーブルの遮へい層についての備忘録

目次

遮へい層の目的

6kV、CVケーブルの遮へい層は
次のような目的のために取り付けられ、接地されている。

●ケーブル絶縁体内の電位分布が均等に なり、ケーブルの安定した運転状態が 得られる。

●ケーブルが絶縁不良で地絡すると、導体から遮へい層を通じて大地に地絡電流が流れる。
 この地絡電流を検出することにより地絡保護ができる。

遮へい層には銅テープが用いられるので導体と遮へい層間あるいは
遮へい層間同士の相互インダクタンスにより遮へい層に誘起電圧や循環電流が生じる。
遮へい層の接地方法やケーブルに流れる負荷電流などによって誘起する電圧、電流はさまざまな様相を示す。

遮へい層の役割

電界の均一化と耐電圧特性の向上

絶縁体に加わる電界の方向を均一にし、コロナ放電の発生を防ぎ、ケーブルの耐電圧特性を高める。
特に、絶縁体と遮へい層の間に半導電層を密着させることで
界面の電位を均一にし、コロナ放電の発生を抑制する。

感電防止

遮へい層を接地することで、ケーブルの表面電位を大地と同電位に保ち
万一ケーブルが損傷した場合でも感電事故を防止する

地絡・短絡事故時の検出と遮断

ケーブルの絶縁不良などにより地絡事故が発生した場合
地絡電流を遮へい層を通して速やかに大地に流し、保護継電器(ZCTなど)がこれを検知して
遮断器を動作させることで事故範囲の拡大を防ぐ。

誘導障害の防止

周囲の設備や他のケーブルへの電磁誘導を抑制し、ノイズの発生や誤動作を防ぐ。

介在物への電界印加の防止

ケーブル内部の介在物(例えば、多心ケーブルの心線間の隙間など)に電界が加わることで
誘電正接(tanδ)が大きくなるのを防ぐ。

遮へい層の構造と材質

高圧ケーブルの遮へい層は
主に導体、内部半導電層、絶縁体、外部半導電層、遮へい層、シースの順に構成されている。

内部半導電層・外部半導電層

導体と絶縁体、絶縁体と遮へい層の間にそれぞれ設けられ、電界を均一化し
コロナ放電を防ぐ役割がある。
加工方法としては、絶縁体と同時に押し出す「押出式(E)」と、テープを巻く「テープ式(T)」がある。
高圧CVケーブルにはE-Eタイプ(内部・外部ともに押出式)やE-Tタイプ(内部押出式、外部テープ式)などがある。E-Eタイプは水トリー耐性が高いとされる。

遮へい層本体

一般的に、銅テープがスパイラル状に巻かれる構造が主流。
銅編組やアルミテープ、アルミ箔付プラスチックテープ、銅・鉄テープなどの種類もある。
高圧ケーブルでは必然的に銅テープ遮へいが用いられる

シース

遮へい層の外側を覆い、外傷や水分、有害物質からケーブルコアを保護する。
ビニルやポリエチレンが主な材質として使用される。

遮へい層の接地方式

遮へい層の接地は非常に重要で、その方式には大きく分けて「片端接地」と「両端接地」の2種類がある。

片端接地

ケーブルの片側の遮へい層を接地し、もう一方の端は開放(非接地)とする。

特徴

遮へい層に循環電流が流れないため、遮へい層での回路損がない。
ケーブル長が比較的短い(おおむね100m以下)場合に採用される。

デメリット

導体電流による電磁誘導によって、非接地端では接地点からの距離に応じて
遮へい層と大地間に誘起電圧が発生する。この誘起電圧が大きくなりすぎると(一般的に100V以上)
安全上の問題や絶縁劣化の原因となるため、長距離ケーブルには不向きとなる。

高圧引込ケーブルの場合、一般的に受電盤側で接地し、PAS側では非接地とする

両端接地

ケーブルの両側の遮へい層を接地する。

特徴

遮へい層の電位がほとんど0Vとなり、安全性が高い。
サージ侵入時にも異常電圧が発生しにくい。

デメリット

遮へい層と大地の間でループが構成されるため、循環電流が流れてしまい
遮へい層に損失が発生する。これによりケーブルの許容電流が低下する可能性がある。
また、G端子接地法で絶縁測定を行う場合は、ケーブル両端の接地線を外す必要がある。

ケーブル長が比較的長い(おおむね100m以上)場合に採用される。
誘起電圧が許容範囲を超えるのを防ぐため

ZCT(零相変流器)を用いた地絡検出と遮へい層の接地

地絡事故を正確に検出するためには、ZCTと遮へい層の接地方法に注意が必要となる。
通常、ZCTはケーブルの各相導体を通すが、遮へい層の接地線をZCTに通すかどうかで
保護範囲が変わる。
地絡電流
が遮へい層を流れる際に、ZCTを往復するように接地線を接続することで
ケーブル導体からの地絡電流のみをZCTで検出し、シールドからの循環電流による誤動作を防ぐことができる。

遮へい層の劣化診断

高圧ケーブルの遮へい層も経年劣化や外部要因(温度変化による伸縮ストレスなど)により断線することがある。
遮へい層の劣化診断には、以下のような方法がある。

直流電流供給による抵抗値測定

遮へい層に直流電流を供給し、発生する直流電圧を抵抗値に変換して測定すること
遮へい層の劣化(断線や腐食による抵抗値の上昇)を診断する。

交流重畳法(活線診断)

活線状態で、ケーブルの絶縁体に発生した水トリーによって生じる特定の周波数の交流電流を測定し
絶縁劣化を診断する方法と合わせて、遮へい層の劣化診断も行われることがある。

参考資料

新電気 2022年8月号 現場の疑問解決塾「高圧ケーブル(3)」より画像引用

新電気2019年 9月号 実務理論 シリーズ 第1回

CVケーブル遮へい層の 接地方式とその取扱い 片端接地方式 編 より一部引用

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