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過電流についての基礎知識まとめ

過電流(かでんりゅう)とは、電気回路に設計された許容値を超える電流が流れる異常な状態を指す。
これは、電線や電気機器の発熱、焼損、火災といった危険な事態を引き起こす可能性がある。

目次

過電流の主な原因

  • 短絡(ショート): 配線が誤って接触したり、絶縁体の破損などにより、電気抵抗の低い経路ができてしまうことで、大電流が流れる。
  • 過負荷: 複数の電気機器を同時に使用したり、定格以上の電力を必要とする機器を使用したりすることで、回路に許容以上の電流が流れる。
  • 地絡: 電気機器や配線から地面に電流が漏れ出すことで、過電流が発生する場合がある。
  • 落雷: 雷サージによって、瞬間的に大きな電流が流れ込むことがある。
  • 電気機器の故障: 電気機器内部の部品の故障などが原因で、異常な電流が流れることがある。

過電流の種類

過電流はその発生原因や状態によって、いくつかの種類に分類される。

  • 短絡電流: 短絡によって発生する、非常に大きな電流のこと。瞬時に遮断する必要がある。
  • 過負荷電流: 機器の使い過ぎなどにより、定格電流をわずかに超える程度の電流が比較的長い時間流れる状態。
  • 地絡電流: 地面に漏れ出す電流で、漏電遮断器が動作するほどの大きな電流となる場合もある。

過電流保護

過電流による事故を防ぐために、様々な保護装置が用いられている。

  • ヒューズ: 一度過電流が流れると溶断し、回路を遮断する使い捨ての保護素子。
  • 配線用遮断器(ブレーカー): 過電流を検知すると自動的に回路を遮断し、手動で復帰させることができる。
                  一般家庭や工場などで広く用いられている。
  • 漏電遮断器(ELCB/RCD): 地絡による漏電を検知して回路を遮断する装置だが
                 過電流保護機能を持つものもある。
  • サーマルリレー: モーターなどの過負荷保護に用いられ、電流による発熱を利用して回路を遮断する。
  • 過電流継電器(OCR): 変電所や工場などの高圧回路で使用され
               設定値以上の電流を検知すると遮断器に信号を送る。

過電流保護装置の動作原理

過電流保護装置は、それぞれ異なる原理で過電流を検知し、回路を遮断する

  • ヒューズ: ヒューズ内部には、一定の電流値を超えると発熱して溶断する金属製の細い線(可溶体)が入っている。過電流が流れると、この可溶体が瞬時に溶断し、電流の流れを物理的に遮断する
    安価で信頼性が高いが、一度溶断すると交換が必要
  • 配線用遮断器(ブレーカー): 主に「熱動形」と「電磁形」の2種類の動作原理を組み合わせている。
    • 熱動形: バイメタルという異なる金属を張り合わせた部品が、過電流による発熱でわずかに変形する性質を利用している。この変形が一定量に達すると、トリップ機構が働き、接点を分離して回路を遮断する。
      主に過負荷による比較的緩やかな過電流に対応する。
    • 電磁形: コイルに過電流が流れると発生する磁力を利用している。短絡のような急激な大電流が流れると、瞬時に電磁石がトリップ機構を吸引し、接点を分離して回路を遮断する。
  • 漏電遮断器(ELCB/RCD): 漏電を検知する機能が主だが、過電流保護機能を持つものもある。漏電は、通常流れるべきでない経路に電流が流れる現象で、感電の危険性がある。漏電遮断器は、回路への行きと帰りの電流の差を常に監視しており、わずかな漏れ電流を検知すると高速に回路を遮断する。過電流保護機能を持つものは、設定された電流値を超える過電流も検知して遮断する。
  • サーマルリレー: バイメタルの変形を利用する点は熱動形のブレーカーと似ているが、主にモーターの過負荷保護に特化しており、手動で復帰させる必要がある。
  • 過電流継電器(OCR): 設定された電流値以上の電流が一定時間以上流れると、電気信号を出力し、接続された遮断器を動作させる仕組みのこと。保護範囲や動作特性を細かく設定できるため、高圧受電設備などで重要な役割を果たす。

過電流が引き起こす具体的な影響

過電流が流れると、以下のような具体的な影響が現れる。

  • 発熱: 電線や電気機器は、電流が流れる際に電気抵抗によって熱を発生させる。過電流が流れると、この発熱量が異常に増加し、電線の被覆が溶けたり、電気機器の部品が損傷したりする原因となる。ひどい場合には、周囲の可燃物に引火し、火災につながる危険性もある。
  • 焼損: 過剰な熱によって、電線が焼け焦げたり、電気機器のコイルや半導体素子などが焼き切れて故障したりする。
  • 絶縁破壊: 電線や電気機器の絶縁体が、過熱や電気的なストレスによって破壊され、短絡や漏電を引き起こすことがある。
  • 機器の寿命低下: 繰り返し過電流が流れると、電気機器の部品に徐々にダメージが蓄積し、本来の寿命よりも早く故障してしまうことがある。
  • 電圧降下: 過電流が流れると、電源からの供給能力を超え、回路全体の電圧が低下することがある。
    これにより、他の接続された機器が正常に動作しなくなる可能性がある。

過電流対策の重要性

過電流は、電気設備の故障や火災といった重大な事故につながる可能性がある。
そのため、適切な過電流対策を講じることは非常に重要となる。

  • 適切な配線と容量選定: 電気機器の容量や使用状況に合わせて、適切な太さの電線を選定し、配線する必要がある。容量不足の配線は過熱の原因となる。
  • タコ足配線の禁止: コンセントの許容容量を超える数の電気機器を同時に接続するタコ足配線は過負荷の原因となり危険。
  • 定期的な点検とメンテナンス: 電気設備や電気機器は、定期的に点検し、異常がないか確認することが大切となる。配線の劣化や接続部の緩みなどは、過電流の原因となる可能性がある。
  • アース(接地)の重要性: 地絡による過電流や感電を防ぐために、適切なアース工事を行うことが重要。
  • 保護装置の適切な設置と管理: ヒューズやブレーカーなどの保護装置は、適切な容量のものを選び、正しく設置し、定期的に点検する必要がある。
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この記事を書いた人

コメント

コメント一覧 (2件)

  • お世話になっています。1ms程度の電流遮断とスパークがめっき装置でたまに発生して困っています。スタンドアローンである一定範囲を超えた時にアラームのトリガー信号を出し、日時をHDDにmdvファイルで記録するシステムが可能でしょうか。よろしくお願いいたします。

    • ご質問ありがとうございます。
      短時間での電流発生日時を記録したいとのことですが
      データロガーの使用を検討してはいかがでしょうか。
      私自身はまだそれほど詳細を説明できるほどの経験はありませんが
      信号を記録する際はデータロガーを使用しております。
      下記にメーカーの専用サイトのリンクを貼っておきます。
      よろしければご一読お願いします。

      https://www.hioki.co.jp/jp/products/listUse/?category=31

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