MENU

漏電アラーム遮断器についての基礎知識まとめ

漏電アラーム遮断器は、通常の漏電遮断器(ELB)とは異なり
漏電を検知した際に電気回路を遮断せず、警報(アラーム)のみを出力するタイプの遮断器のこと。

目次

漏電アラーム遮断器の基本的な機能

  1. 過電流保護機能: ノーヒューズ遮断器(NFB)と同様に
    過負荷短絡(ショート)が発生した場合には、回路を遮断して電線や機器を保護する。
  2. 漏電検知・警報機能: 電路の漏洩電流(漏電)を常時監視し、設定された感度電流以上の漏電を検知すると
    警報信号を出力する。この警報信号は、ブザー、ランプ、または上位の監視システムなどへ送られる。

漏電アラーム遮断器の必要性について

漏電アラーム遮断器は、電力供給を継続しながら漏電状況を監視したいという、特定の用途に非常に適している。

  • 連続稼働が求められる重要回路:
    • データセンター、サーバー室: 漏電で電源が遮断されると、システムダウンやデータ損失など
      甚大な被害が発生する可能性がある。漏電を検知してもすぐに停止せず、まずは警報で異常を知らせ
      点検・修理の準備をすることが可能。
    • 病院の医療機器: 命に関わる医療機器の電源が突然遮断されることは避けることが絶対必要がある。
    • 工場の生産ライン: 漏電による予期せぬライン停止は、生産効率の低下や大きな経済的損失につながる。
    • 信号機や防犯カメラなどの社会インフラ: これらが停止すると、交通渋滞や治安悪化など
      社会に大きな影響を与える可能性がある。
  • 予知保全・予防保全: 漏電が発生してもすぐに遮断しないため、漏電の進行状況を把握し
    計画的な点検や修理を行うことで、突発的な事故や停止を防ぐ。
  • 高調波電流を含む回路: 近年増加しているインバータやUPSなどを使用する回路では、高周波成分を含む漏洩電流が発生することがあります。通常の漏電遮断器では、誤って動作してしまうケースがあるため、漏電アラーム遮断器が選択されることがある。

漏電アラーム遮断器の内部機構

内部接続図例 

chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://dl.mitsubishielectric.co.jp/dl/fa/document/catalog/lvcb/yn-c-0388/y0388q1811.pdf
三菱ノーヒューズ遮断器・漏電遮断器漏電アラーム遮断器単3中性線欠相保護付ノーヒューズ遮断器単3中性線欠相保護付漏電遮断器漏電リレー・リモコン機器・サーキットプロテクタ
より画像引用

漏電アラーム遮断器の動作原理と構成

漏電アラーム遮断器は、大きく分けて以下の2つの機能が一体となっている。

配線用遮断器(MCCB/NFB)機能

漏電検出・警報機能

零相変流器(ZCT: Zero-phase Current Transformer)
電路の行きと帰りの電流の差を検出する。正常な状態では、行きと帰りの電流は等しく
ZCTの出力はゼロとなる。しかし、漏電が発生すると、電路の一部が大地に電流を流すため
行きと帰りの電流に差が生じ、ZCTから微小な信号が出力される。

漏電検出リレー(地絡継電器:
ZCTからの信号を増幅し、設定された感度電流
(例:30mA, 100mA, 200mA, 500mAなど)
を超えると内蔵されたリレーが動作する。

警報出力
このリレーの動作により、内蔵のブザーを鳴らしたり、警報ランプを点灯させたり
外部の監視システム(SCADA、DDCなど)へ接点信号を出力する。
この信号は、設備異常を管理者に知らせるために利用される。

漏電アラーム遮断器のメリット・デメリット

メリット  

  • 電力供給の継続: 漏電時にも電源が落ちないため、システムや機器の連続稼働を維持できる。
  • 計画的な対応: 警報により漏電を早期に発見できるため、事前に対応計画を立て
           適切なタイミングで点検や修理を行うことが可能です。
  • 省スペース・省施工: 配線用遮断器(NFB)漏電リレーZCT(零相変流器)を組み合わせたシステムと比較して、一体型であるため省スペースで、配線工事も簡略化できる。

デメリット  

  • 漏電による感電・火災リスクが残る: 漏電を検知しても遮断しないため、漏電状態が継続する。
    漏電電流が大きい場合や、放置されると、感電や火災のリスクが残る
    そのため、漏電アラームが作動した場合は、速やかに原因を究明し、適切な処置を講じる必要がある。
  • 法規制への適合性: 日本の電気設備技術基準の解釈では、原則として地絡(漏電)時に自動的に電路を遮断する装置(漏電遮断器)の設置が義務付けられている。
    そのため、漏電アラーム遮断器を設置する場合は、その回路の特性や設置場所、リスクなどを考慮し
    適切な設計と運用が必要。
    基本的には、人身保護や火災防止を目的とする場所には、漏電遮断器(ELB)を設置する必要がある。

重要な点
通常の漏電遮断器(ELB/RCD)は、この漏電検出リレーが動作すると同時に
遮断器本体の引き外し機構を作動させ、回路を遮断する。
漏電アラーム遮断器は、この引き外し機構を漏電検出リレーと直接連動させず、警報出力のみを行うという点が
最大の違いとなる。

漏電アラーム遮断器の選定と設置上の注意点

感度電流の設定
漏電を検知する感度電流は、用途によって適切に設定する必要がある。
小さすぎる感度では、通常運転時に発生するわずかな漏洩電流(ノイズ)誤警報を発する可能性がある。
大きすぎる感度では、実際に危険な漏電が発生しても警報を発しない可能性がある。

警報方式と連携
単にブレーカーにブザーやランプが内蔵されているだけでなく
上位の監視システム(ビル管理システム、FAシステムなど)と連携して
離れた場所でも警報を把握できるようにすることが重要

※警報の履歴を残し、傾向分析に役立てるシステムもある。

設置場所と回路の特性:

インバータやUPSを含む回路:
これらは高調波成分を含む漏洩電流を発生させやすいため、一般的な漏電遮断器では誤動作しやすいことがある。
漏電アラーム遮断器の中には、高周波対応型やインバータ対応型など
特定の高調波成分に影響を受けにくい設計がされたものもある。
これらを選ぶことで、誤警報を減らし、安定した運用が可能になる。

大地への絶縁抵抗:
漏電アラーム遮断器を設置する回路全体の絶縁状態が良いことが前提。
すでに絶縁抵抗が低い回路では、常に警報が鳴りっぱなしになる可能性がある。

漏電アラーム遮断器の活用事例

  • 金融機関のサーバーシステム
    取引が中断することは許されないため、漏電でシステムがダウンするのを防ぐ。
    (警報があれば、業務時間外やメンテナンス時間中に対応計画を立てられるため
  • 鉄道の運行管理システム
    信号機や通信機器など、停止が許されない設備で活用される。
    漏電警報で異常を察知し、点検班が現場に急行する間に、運行を継続させることができる。
  • クリーンルームの設備
    微細な粒子や温度・湿度管理が厳格な環境で、設備の停止は大きな損失につながる。
    漏電アラームで事前に異常を察知し、計画的に停止・修理を行うことで、クリーンルームの環境を維持ができる。
  • 大規模施設の変電設備
    高圧受電設備や幹線において、漏電を検知しても即座に広範囲を停電させるわけにはいかないため
    まず警報を出して状況判断を仰ぐ際に用いられる。
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次