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三菱製無方向性地絡継電器(MGR-A3T-R)についてのまとめ

目次

無方向性地絡方向継電器(HGR)の概略

HGR(High Grand Relay)

保護目的:漏電・波及(もらい)事故の相互防止

無方向性地絡継電器(HGR)とは

電気設備の電路や設備で絶縁劣化や樹木などとの接触、低圧電源との接触(混触の発生時には、感電や機器故障が想定される(地絡の発生
地絡が発生すると電路と大地との間で、地絡電流零相電流が発生する。
零相電流は、大電流のため零相変流器(ZCT)を用いて地絡継電器に入力する。

地絡継電器は、地絡過電流継電器と呼ばれる場合がある。

地絡継電器(GR)地絡方向継電器(DGR)の違いについて

地絡継電器(GR)
→事故電流を零相変流器(ZCT)で検出し、その大きさのみで動作する

地絡方向継電器(DGR)
→事故電流をZCTおよび零相電圧検出装置(ZPD)の組み合わせで検出し、その大きさと両者の位相関係で動作する。

三菱製無方向性地絡継電器(MGR-A3T-R)の仕様

形名と引外し方法

定格

  • 入力電流定格: 0.2A (MZT形ZCT1次)
  • 周波数: 50/60Hz切替
  • 制御電圧: AC110V (変動範囲 90~120V)

整定 

  • 動作値
    LOCK -0.1-0.2-0.4-0.6-0.8-1.0A (MZT形ZCT1次側換算値)
  • 動作時間
    • 瞬時 (ψ): 0.2~0.3秒、0.4~0.5秒、0.6~0.7秒、0.8~0.9秒、1.0秒
    • 周波数: 50Hz (SW1=ON) ~ 60Hz (ψ) (SW1=OFF)
  • 使用条件設定
    MGR-A3T-Rに「出力接点の自己保持(SW2-ON) – 自動復帰(*)(SW2-OFF)」はなし
  • 自己監視
    • 正常時にはRUN LED (緑色) が点灯する。

動作表示

  • 表示項目: 「地絡」
  • 表示色:
    • 動作時: 橙色、復帰時: 黒色
    • 動作時に、黒色から橙色に変わる。
  • 状態: 表示復帰レバーの操作により、橙色から黒色に変わる。

数値表示

  • 表示項目 | 表示範囲
    • I₀ 計測 | 0.05~0.09A、0.1~1.5A
    • 始動 | I₀
    • I₀ 整定 | Lo (※1): 0.1~1.0A
    • 動作時間整定 | In (※2): 0.2~1.0s
    • 周波数設定 | 50, 60Hz
    • 接点設定 | Ho, FU. (MGR-A3V-R形のみ)
    • 事故記録 | 0.1~1.5A
    • 事故記録リセット | D.K. (5秒以上ポジション保持にて記録リセット)
    • 強制動作 | F.O.
  • ※1 Lo: LOCK整定時の表示となる。
        LOCKとは、その要素をロックして動作させないためのもの。
  • ※2 In: 瞬時整定時の表示となる。

強制動作

  • 定格制御電圧印加状態にて、表示選択スイッチを「強制動作」に合わせ
    整定をLOCK以外にし、テストボタンを2秒以上押すと接点が強制動作する。
    (尚、強制動作時、動作表示器の表示色の変化 [黒色→橙色] はない。)

定格消費 VA (制御電源)

  • 定常時: 3.0VA
  • 動作時: 7.0VA

動作時間特性

全整定値、I₀=0A→整定値の130%、400%に急変時

三菱製無方向性地絡継電器(MGR-A3T-R)の構造

1. RUN 表示 LED (緑色)

  • 制御電源・電子回路・プログラムデータを常時監視しており、正常時には点灯する。

2. テストボタン

  • 定格制御電圧印加時に表示選択スイッチを強制動作に合わせ、2秒以上押すと接点が強制動作する。
  • 動作電流整定が「LOCK」の場合には強制動作できない。

3. CPU リセットボタン

  • ボタンを押している間、RUNランプが消灯し、リレー機能がロックされる。

4. 使用条件設定スイッチ

  • 以下の項目について、SWのON/OFFで整定する。
  • SWの整定時には、先の鋭いものは使用しないこと。
    ※スイッチのレバーが破損するおそれがある

工場出荷時の設定はOFF状態。(例:周波数設定は60Hz。)

5. 動作表示器

  • リレー動作時、黒色→橙色に変わる。

6. 数値表示用 LED

  • 表示選択用切替スイッチの操作により、以下の情報が表示される。
    • 零相電流計測
    • 始動表示
    • 各整定値
    • 事故記録
    • 事故記録リセット
    • 強制動作

7. 表示選択用切替スイッチ

  • ツマミの指示方向の項目が表示される。
  • 中間位置には設定しないこと。
    ※不定(設定どおりの状態が検出できない可能性)となる。

8. 零相電流・動作時間整定用スイッチ

  • ツマミの指示方向の個が整定値となる。
  • 中間位置には設定しないこと。(不定となる。)
  • 黒帯箇所は最大整定で表示は消灯する。

9. 動作表示器の表示復帰レバー (本体内蔵)

  • レバーを押し下げた後、下げたときに動作表示器が復帰する。
  • 注)レバーを過度に引っ張らないこと。
    故障のおそれがある。

三菱製無方向性地絡継電器(MGR-A3T-R)の動作

保護機能

  • 制御電源内蔵
    MGR-A3T-Rは定電圧回路を内蔵しているため
    特別な制御電源を必要としない。
  • 使用条件設定
    使用時は、使用条件設定スイッチにより各使用条件を設定が必要。
  • 事故電流の検出と供給
    高圧需要家内で地絡事故が発生すると
    事故電流(零相電流充電電流)は大地の経て配電線や機器の対地静電容量を通じて流れ
    その事故電流は、MZT形零相変流器(ZCT)により検出され、2次出力により継電器に供給される。
  • タイマーの始動と動作
    零相電流が整定値以上となった場合には、タイマーが始動し
    動作時間整定値以上継続すれば、出力接点と動作表示器が動作する。
  • リレー動作後の状態
    リレー動作後、零相電流が整定値未満となると
    出力接点は自動復帰する。
  • 動作表示器の復帰操作
    動作表示器は、動作表示状態を保持し続けるため、表示を復帰させる場合は
    表示器の下側に取付けてある復帰レバーを操作が必要となる。

RUN 表示 (常時自己監視機能)

  • 制御電源・電子回路・プログラムデータを常時監視しており、正常時には緑色LED (RUN) が点灯する。
  • 異常時には消灯し、数値表示用LEDにエラー「Err」を表示すると共に
    動作出力をロックする。

数値表示機能

  • 表示選択用切替スイッチにより、数値表示LEDに、下記に示す項目を選択表示する。
    • ① I₀ 計測
      入力零相電流を表示する。
      I₀ 計測の表示範囲は、0.05A~1.5A。
      (0.05A未満の時は消灯し、1.5Aより大きい時は「O.F」を表示する。)
    • ② 始動表示
      入力零相電流が整定値以上となった時、「I」と表示する。
    • ③ 整定値表示
      • 継電器の整定状態を表示する機能で
        I₀整定(A)、動作時間(s)の各整定値を表示する。
    • ④ 周波数設定表示
      • 使用条件設定SW1に合わせ、周波数の整定値を表示する。

事故記録機能

  • 事故記録表示
    事故時に動作信号出力と同時に、動作時の零相電流値を記録する。
    表示選択スイッチを事故記録のポジションに合わせると
    最新の記録より順に約2秒間隔で次の記録を表示する
    本機能は5現象分記録可能で、次のリレー動作により新しい動作情報を記録し
    古いデータより順に削除される。
    事故記録は内部メモリに記録されており
    制御電源OFF後に再度RUN LEDが点灯する状態の電源電圧が印加されると
    事故データを確認することができる。
    遮断器動作により制御電源が切れる回路の場合、事故データが記録されないことがある。
    記録を残すには、動作後も制御電源を維持する回路構成にする必要がある。
  • ② 事故記録リセット
    • 表示選択用切替スイッチを「事故記録リセット」に選択し
      5秒以上保持しますと「O.K」が表示され、全ての事故記録のデータがクリアされる。

整定変更表示機能

  • 整定を変更すると
    数値表示用LEDに整定変更後の値を約3秒間、優先的に表示する。

接続図

内部接続線図

外部接続線図

事故時の引き外し回路

(1) 地絡事故時

  • 地絡事故発生時、制御電源からS₁、接点、T₁、引外しコイル、T₂、接点、S₂ を介して遮断器を引外す。

(2) 短絡事故時

  • R相の場合: R相で短絡事故が発生した場合は、C1RからT1Rを介して遮断器を引外す。
  • T相の場合: T相で短絡事故が発生した場合には、C1T、T1T、O₁、T₁、引外しコイル、T₂、O₂ を介して遮断器を引外す。

無方向性地絡継電器(HGR)の試験手順

動作電流特性試験

1.零相変流器のkt-lt端子、又は零相変流器に一線を貫通させる。
2.スライダックを操作し、試験電流を徐々に上昇させ継電器が動作した時の電流値を記録する。
規格:各整定値の±10%

動作時間特性試験


1.零相変流器のkt-lt端子、又は零相変流器に一線を貫通させる。
2.零相変流器に整定値の130%の電流が流れるようスライダックで調整する。
3.零相変流器に電流を投入してから動作するまでの時間を記録する。
4.電流を整定値の400%に変更し、動作するまでの時間を記録する。

判定基準

動作電流特性

整定値の±10%以内で動作

動作時間特性単体

●整定値130%で0.1~0.3秒以内で動作
●整定値400%で0.1~0.2秒以内で動作

慣性特性

整定値の400%の電流を急激に0,05秒の間通電しても動作しないこと

JIS C 4601(1993) より引用

参考資料

chromeextension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.fa.omron.co.jp/data_pdf/commentary/protectiverelays_tg_j_1_1.pdf
OMRON Grobal「保護継電器技術解説」

新電気2019年11月号「保護継電器Q&A」
新電気2020年4月号「リレー試験の基礎知識」

三菱ディジタル形保護継電器
MELPRO-Aシリーズ
地絡継電器
MGR-A3T-R 取扱説明書より一部引用

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